東南アジアのリテール業界において最近よく耳にするようになったのが、「BNPL」という言葉である。これは“Buy NowPay Later(今買って、代金は後払い)”の省略形で、簡単に説明するとクレジットカードを介さない後払い決済サービスのことである。
BNPL市場は新型コロナウイルス禍の東南アジアで急拡大している。東南アジア最大のスーパーアプリを展開するグラブ(Grab)、最大のEC企業であるショッピー(Shopee)、インドネシアの巨大ユニコーン企業であるゴジェック(Go-Jek)とトコペディア(Tokopedia)などの巨大企業がこぞって参入しており、話題のサービスとなっているのだ。ちなみに日本ではあまり聞きなじみのないBNPLだが、メルカリが提供する当月の購入代金を翌月にまとめて精算できる「メルペイスマート払い」は典型的なBNPLサービスである。
東南アジア中心に市場拡大の兆し
BNPLは、もともとはスウェーデンのフィンテック企業クラーナ(Klarna)や米国のフィンテック企業であるアファーム(Affirm)などのスタートアップが普及・促進してきたビジネスモデルである。日本ではクレジットカードによる「翌月一括払い」が一般に浸透していたため、あまり普及してこなかった。
一方、東南アジア諸国では銀行口座、クレジットカードの保有率がともに低く、その代替となるBNPLが受け入れられる下地が十分にあった。東南アジアで展開されているBNPLサービスは、決済期日までユーザー金利負担をゼロにするケースが多く、また分割回数も柔軟に設計されているため、資金に余裕のない若年層を中心に爆発的に利用が拡大しているのである。
米調査会社であるコヒンレント・マーケット・インサイツによると、
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