米国ではもちろん、世界でも最大の売上を誇るウォルマート(Walmart)。新型コロナウイルスの感染拡大によって社会環境、消費動向が大きく変わるなかでも、変化を瞬時にとらえて機動的に対応するウォルマートならではの経営力を発揮、2020年度の1年間で350億ドル超の増収を果たすという相変わらずの強さを見せつけた。同社の直近の経営戦略と今後の方向性について解説する。
変革の速さの裏にある経営層の「若さ」
本稿を執筆するに当たりウォルマートの有価証券報告書を眺めていたときのことである。実は毎年やっているのが執行役員の平均年齢算出で、ふと思い出して計算してみたのだが、昨年度はCEO(最高経営責任者)のダグ・マクミロン(54歳)を含めた10人で平均は50.9歳だった。最高齢がCTO(最高技術責任者)のスレシュ・クマールの56歳、最年少がグローバルガバナンス/チーフリーガルオフィサー/企業戦略のレイチェル・ブランドと、傘下のホールセラー、サムズクラブ(Sam’sClub)CEOのキャスリン・マクレイのそれぞれ47歳である。
日本円にして60兆円近くの売上高を誇る世界最大企業の中枢の平均年齢がおよそ50歳というのは覚えておいて損はないだろう。知力体力ともに最も脂の乗っている年代であることに加えて、ビジネス変革を積極的に推進できる年齢の上限ではないかと思う。
この企業のデジタルトランスフォーメーションはすでに終わっていると言っても過言ではなく、今は出来上がった土台を生かしさらに進化させる段階に入っているのだが、痛みを伴う変革をスピード感をもって乗り切ることができたのも若さと無関係ではないと思っている。
ちなみに執行役員のうち女性は4人、インド系が1人なので、多様性に関しては、ジェンダーは十分だが人種は白人に片寄っている、といったところだ。
昨年はパンデミックですべての小売企業が大変な状況に陥ったのだが、最も大きな変化がECシフトだった。店内の客数制限や外出規制などリアル店舗に対するさまざまなハードルによって消費が一気にECへシフトしたわけだが、それを受け止めることができたのもそれまでにデジタルへ十分に投資していたからである。やるべきことをしっかりやっていた会社とやっていなかった会社の差が如実に表れたと思っている。
空前の成長を遂げた20年度業績の中身
ウォルマートの
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