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ドアダッシュVSウーバー? 急成長する米フードデリバリー市場、大型買収でシェア争いが過熱!

飲食店の料理を宅配するフードデリバリーの需要がコロナ禍によって急拡大しており、オンラインプラットフォームを運営する企業が急速に台頭している。フードデリバリーは中国と米国が2大市場となっている。中国では「美団(Meituan)」がシェア65%、アリババ傘下の「Ele.me」が同30%と、2社が市場を複占しており、この状況はコロナ禍の前後で変化していない。その一方、米国ではコロナ禍で状況が大きく変化している。
取材協力:高島勝秀(三井物産戦略研究所)

12月9日、米料理宅配サービス最大手のドアダッシュがニューヨーク証券取引所に新規株式公開(IPO)した。ニューヨークで11月撮影(2020年 ロイター/CARLO ALLEGRI)

 米調査会社Second Measureによると、2020年における米フードデリバリーの市場規模は対前年比2倍の約100億ドルで、飲食店の総売上高の約1割となった。企業ごとのシェアを見ると、コロナ禍に見舞われた2020年以降、最大手ドアダッシュ(DoorDash)が6割を占めるまでになっている(図表①)。

図表①米国の外食宅配業者の売上高シェア

 米国のフードデリバリーは、地域や都市によってシェアの構成が大きく異なっている。ドアダッシュはサンフランシスコ近郊やダラス、ヒューストンで約7割のシェアを握っているが、2番手のウーバーイーツ(Uber Eats)はマイアミで5割強を占める。一方、ニューヨーク市ではグラブハブ(Grubhub)が約4割と優位に立つ。

 この地域間の差異は、主として提携する外食チェーンの違いに起因しており、提携するチェーンの店舗が多い地域では、フードデリバリー企業のシェアも大きくなるという構図となっている(図表②)。2020年にドアダッシュのシェアが急拡大した要因として、6月に新たに4億ドル、創業から総計で25億ドルの資金調達を行い、豊富な資金を基に提携チェーンを増やし、サービス提供エリアとメニューを拡大したことが挙げられる。デリバリーを行わず店舗販売のみであったリトルシーザーズピザ (Little Caesars Pizza)と提携し、同チェーンにデリバリーを開始させたことも話題となった。

図表②米国の外食宅配業者が提携関係にある飲食店企業リスト

 ただし、外食チェーンとの提携関係も固定的ではなく、マクドナルド(McDonald’s Corp)のように複数の宅配企業と提携するケースもある。このため宅配事業者では、会員制を導入してユーザーを囲い込み、利用率を向上させることで提携チェーンの維持・拡大を図る動きもみられる。会員になると、注文ごとの配送料が無料になるといった特典がつく仕組みで、ドアダッシュでは、全利用者約1800万人の約3割となる500万人が会員となっている。これもシェア拡大の効果が大きい要因と考えられる。

 米国流通に詳しい三井物産戦略研究所の高島勝秀氏は「米フードデリバリーは目下のところドアダッシュが一歩抜け出した感があるものの、優位にある都市・地域での事業を基盤としてウーバーイーツやグラブハブが巻き返してくる可能性もある。引き続き市場は高成長が見込まれ、競争は今後も続いていくだろう」と話す。

今後はフードデリバリーを超えた競争も

 ウーバーイーツを展開するウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)では、コロナ禍でライドシェアサービスの需要が減少したことを受け、フードデリバリーへの注力を加速させている。その一環が、2020年7月に発表され、同12月に完了したポストメイツ(Postmates)との合併だ。

 その影響もあり、19~20年のウーバー・テクノロジーズの事業セグメント別売上高(世界全体)を見ると、19年通年ではライドシェアが売上高全体の82%、フードデリバリーが11%であったものが、20年ではそれぞれ55%、35%となり、フードデリバリーへの注力が顕著となっている。なお同社は、同業の米グラブハブの買収を模索していたものの、交渉を打ち切っていた。そしてそのグラブハブは20年6月、欧州企業(オランダ・英国)のジャスト・イート・テイクアウェイ(Just Eat Takeaway)によって買収されているように、合従連衡が活発である。

 フードデリバリー企業はラストマイル宅配を軸としてビジネス領域を拡大させており、それに伴った競争激化の様相もうかがえる。ドアダッシュは20年6月に米ドラッグストア大手のCVSヘルス(CVS Health Corporation)と提携し、同社商品のEC宅配を開始した。さらに8月にはネットコンビニを開設し、小売業に参入している。ウーバーイーツは21年2月に米酒類宅配業者のドリズリー(Drizly)を買収し、商品ラインナップを拡充。日本ではローソン(東京都)と提携し、ネットコンビニの宅配を実施している。

最大手のドアダッシュは20年12月9日に株式上場し、上場前は160億ドルだった企業評価が一時は600億ドルまで達した。(3月9日時点では438億ドル。)同社は米国を主に、カナダと豪州の3カ国で事業展開をしているが、21年1月に掲載された同社CEOのインタビュー記事によると、日本市場参入への可能性も示唆している。米フードデリバリー最大手の日本進出となれば、競争激化は間違いなさそうだ。