[ニューヨーク 4日 ロイター] – 米ファストフード大手マクドナルドは来月、油で揚げた「クリスピーチキン」のサンドイッチ3種類を米国で販売開始する。「巨人」マックを迎え撃つのはレストラン・ブランズ・インターナショナル(RBI)傘下のポパイズなど鶏肉メニュー専門チェーン。急成長する米チキンサンド市場が新たな戦いに突入する。
マクドナルドはこのほどロイターの取材に、「クラシック」、「デラックス」、「スパイシー」の3種類のクリスピーチキンサンドを2月24日に発売する計画だと認めた。いずれも鶏胸肉を使い、波形にカットしたピクルスと一緒に、バターを塗ったポテトパンに挟んで提供する。
マクドナルドの新戦略を支える強みの一つは、1980年代に発売された「チキンマックナゲット」の長期的な人気だ。昨年は「スパイシーチキンマックナゲット」の期間限定販売が寄与し、9月の既存店売上高が約10年ぶりの高水準となった。
株式アナリストのマーク・カリノウスキ氏は「鶏肉は消費が広がっている成長分野。その波に乗ろうとしている戦略だ」と解説した。
新規参入相次ぐ急成長市場
果たして、マックは巨大な組織力で専業メーカー業者のチキンサンドと張り合うことができるのか。
市場関係者の間には圧力調理器の不足など運用面や構造面の問題を指摘する声がある。コンサルタントのチャス・ハーマン氏は「マクドナルドは鶏肉事業で戦えないと断言してもいい」と話す。
米ファストフード業界は、ポパイズが2019年8月に初のチキンサンドを発売した後、SNSを発端として同業チックフィレイとの戦いが勃発。ポパイズはサンドイッチがすぐに売り切れて既存店売上高が大きく伸びる状態が続き、他社が追随した。
チックフレイの南部での成長ぶりはマクドナルドの現地フランチャイズ店を圧迫。こうした動きもマクドナルドの新メニュー投入を後押しした。
「ネーションズ・レストラン・ニュース」によると、昨年は新型コロナウイルスのパンデミックで供給が混乱したにもかかわらず、チキンサンドを新たにメニューに載せるか、従来のチキンサンドを改良したレストランチェーンが少なくとも20社に上った。
クレディ・スイスのアナリスト、ローレン・シルバーマン氏によると、マクドナルドがクリスピーチキンサンドで成功を収めるには、平均的店舗の1日当たりの販売が150個程度に達する必要がある。これに対してバーガーキングなら、サンドイッチ新製品の1日当たり販売数が40個で大成功だと見なされるという。
マクドナルドは既存の顧客を引きつけるためにコストを抑え、ライバルが販売する4ドルのサンドイッチと競合する必要もある。
専業チェーンには劣るマックの設備
マクドナルド米国法人のジョー・アーリンガー社長は11月9日の投資家向け会合でチキンサンドについて、より大きな「鶏肉プラットフォーム」のための「足掛かり」だと説明。「鶏肉メニューだけを手掛ける国内外のライバルは強力なブランド価値と信頼を得ている。鶏肉メニューが素晴らしいとの評判を高めることは、われわれにとって非常に高い志の1つだ」と述べた。その上で、既存のマックチキンサンドについても味付けやマーケティング、宣伝を刷新する考えを示した。
マクドナルドのマックナゲットは処理して衣を付け、事前に一部調理が済んだ状態で冷凍されている。しかし、専門業者を打ち負かせるようなフレッシュな味わいのチキンサンドを提供するとなると、別の方法が必要だ。
これについて、元加盟店オーナーのジム・ルイス氏は「大ぶりで厚みがあり、パン粉を付ける前の鶏肉を1万4000もの店舗で確保するのは困難だ」と述べた。
マクドナルドは圧力調理器など鶏肉専門店が使う料理器具が不足し、店舗内に自家製パン製造施設も持っていない。
ポパイズやバーガーキングを傘下に持つレストラン・ブランズのフェルナンド・マチャド最高マーケティング責任者は「マクドナルドの今の設備と複雑なキッチン構造で何かをやるのは非常に難しい」と話した。ポパイズの鶏肉は店舗で24時間調味液につけ込んでいるという。「それが簡単だったら、うちのバーガーキングでもできたはずだ」
しかしマクドナルドはその巨大さが支えになるかもしれない。同社の米国内の店舗数は約1万3846店で、チックフレイ、ポパイズ、KFC、チャーチズ、ザックスビー、ボージャングルズ、エルポヨロコの全店舗の合計を上回る。
コンサルタントのリチャード・アダムズ氏は「顧客はマクドナルドの店舗を2、3カ所素通りしないと(チックフレイや)ポパイズの店舗にたどり着けない。競合するメニューでこうした顧客を引き込むチャンスはある」と指摘した。