[ワシントン/ダボス(スイス) 20日 ロイター] – 国際通貨基金(IMF)は20日に発表した世界経済見通し(WEO)で、2020年の成長率を3.3%とし、昨年10月時点の予測から0.1%ポイント下方修正した。インドを含む新興国の経済が予想より大きく減速すると予測されることが背景。ただ、米中が通商交渉で「第1段階」の合意に達したことで貿易、および製造業活動が近く底入れする兆しが改めて示されたとした。
19年の成長率は2.9%になったとし、0.1%ポイント下方修正。21年は3.4%とし、0.2%ポイント引き下げた。
下方修正はインドを含む多くの主要新興国について経済見通しを再評価したことが背景と説明。こうした国では、信用収縮のほかノンバンク部門の圧迫により、内需が予想より大きく減退したとしている。
このほか、チリについては政情不安、メキシコについては投資が引き続き弱体化していることを理由に成長率見通しを引き下げた。
一方、米中が今月15日に貿易交渉を巡る第1段階の合意に署名したことで市場心理が改善したと指摘。「こうした安定化に向けた初期の兆候は根付き、最終的には堅調さが継続している消費支出と改善された企業投資との間の連携の強化につながる可能性がある」とした。ただ「世界的なマクロ経済データでは、転換点の兆しはまだほとんど見られていない」と慎重な見方も示した。
ゲオルギエバ専務理事は世界経済フォーラム(WEF)出席のために訪れているダボスで行った記者会見で、「まだ転換点には達していない」とし、「今年は年明け早々、中東で緊張の高まりが見られたほか、豪州やアフリカの一部は気候変動による劇的な衝撃を受けた」と指摘。世界的な経済成長は底入れした可能性があるものの、回復の兆しはまだ見られず、通商問題から気候変動問題に至るまで数多くのリスクが存在していることで見通しの不確実性は高いとの認識を示した。
国・地域別では、中国の20年の成長率は6.0%とし、前回見通しから0.2%ポイント上方修正。米国が発動予定だった一部関税措置を取り下げたことなどを理由に挙げた。
ただ米国については、17年の減税措置の影響が薄れていることに加え、連邦準備理事会(FRB)の緩和策を背景に、20年の成長率は2.0%になるとし、前回見通しから0.1%ポイント下方修正した。
ユーロ圏は1.3%になるとし、前回見通しから0.1%ポイント下方修正。ドイツ製造業の停滞のほか、スペインの内需低迷が重しになるとした。
英国については欧州連合(EU)離脱が秩序立ったものになるとの見方から、20年は1.4%、21年は1.5%で安定化するとの見方を示した。
インドは5.8%とし、前回見通しから1.2%ポイント下方修正した。国内の信用収縮が要因で、今回の世界経済見通しでは新興国としては最大の下方修正となった。21年には財政刺激策の効果で6.5%に戻すとの見方を示したが、前回見通しからは0.9%ポイントの下方修正となる。
IMFはチリなど他の新興国も下方修正。メキシコについては1.0%になるとし、前回見通しから0.3%ポイント引き下げた。
IMFは米中の第1段階の合意でリスクは後退したとしながらも、「米・イラン問題を含む地政学的な緊張の高まりが世界的な原油供給の阻害や心理の悪化につながり、企業投資が弱体化する可能性がある」とし、多くの国で社会不安が高まっていることで経済活動が阻害され、成長率が予想よりも低くなる可能性があると警告した。