[ワシントン 30日 ロイター] – 米商務省が30日発表した第3・四半期の実質国内総生産(GDP)の速報値(季節調整済み)は年率換算で前期比1.9%増と、市場予想の1.6%増を上回った。設備投資が減った一方で、個人消費が持ちこたえたほか輸出がプラスに転じた。住宅建設が7四半期ぶりに持ち直したことも押上げ要因だった。景気後退懸念が一段と和らぐ可能性がある。
ただ、米連邦準備理事会(FRB)が追加利下げを止める材料とはならないとみられる。貿易摩擦や世界経済の減速、英国の欧州連合(EU)離脱を背景に、11年目に入った過去最長期間続く米国の景気拡大が危機に直面しているためだ。
米中貿易摩擦によって景況感が悪化し、設備投資は2四半期連続で減少した。昨年導入された1兆5000億ドル規模の減税政策の効果が薄れていることも経済成長を抑制している。
FRBはこの日、2日間の政策決定会合を終える。会合では今年3回目の利下げを決めるとみられている。FRBは7月に2008年以来初めて利下げに踏み切った後、9月にも金利を引き下げた。
ロヨラ・メリーマウント大学(ロサンゼルス)のスン・ウォン・ソン教授は「景気は減速しつつある」とし、「企業の慎重姿勢が継続すれば雇用は減少する。賃金の伸びの鈍化で最終的には消費支出と経済成長に影響が及ぶ」と述べた。
MUFG(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏は、「貿易戦争を巡る先行き不透明感に起因する向かい風で米経済はなお苦境にさらされている」とし、「奇跡的に成長率が第4・四半期に4.0%に跳ね上がったとしても、今年の成長率は2.8%を超えることはない」と語った。
第2・四半期GDPは年率で2.0%増だった。エコノミストは、インフレを引き起こさずに経済が長期間伸び続けられる成長率を1.7―2.0%と試算している。
第3・四半期は市場予想を上回ったものの、通年ではトランプ政権が掲げる19年の成長率目標である3.0%に届かないとみられる。18年は2.9%増だった。
トランプ米大統領は今月初め、10月に予定していた中国に対する制裁関税の引き上げを見送ることを決め、米中貿易摩擦は一時休戦状態にある。ただエコノミストは、これまでの関税が撤回されない限り、リスクは残ると指摘。トランプ政権の当局者は29日、米中通商協議を巡る「第1段階」の合意文書署名が、チリで来月開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に間に合わない可能性が出てきたと話した。
米経済の3分の2以上を占める個人消費は2.9%増と、前期の4.6%増からは減速したものの、健全な水準を保った。前期は17年第4・四半期以来の大幅な伸びだった。
失業率は50年近くぶりの低水準にあり、個人消費を押し上げている。ただ一部のエコノミストは、9月の小売売上高が7カ月ぶりに減少したことから、個人消費が今後も底堅さを保つかどうかを疑問視し始めている。消費者信頼感も低下しているほか、賃金の伸びは失速している。
設備投資は3.0%減と、3年半超ぶりの大幅な落ち込みだった。前期は1.0%減少していた。機器のほか、ガスや石油の立坑・油井を含む住宅以外のインフラ投資が軟調だった。設備投資の低迷につながった貿易摩擦や原油安を反映した。
航空機大手ボーイング<BA.N>の問題も設備投資の打撃となっている。先週発表されたボーイングの決算は、最も販売が好調だった737MAX機が運航停止となったことで利益が53%減少した。737MAXはインドネシアとエチオピアで墜落事故を起こした後、3月以降運航停止となっている。
JPモルガン(ニューヨーク)のエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「第3・四半期の民間部門の在庫増の最大4分の1が航空機だったもようだ。これにはボーイングの737MAX機も含まれる」と述べた。
輸出と輸入はともに増えた。貿易赤字は縮小。貿易のGDPの寄与度はマイナス0.08%ポイントにとどまった。前期はGDPを0.68%ポイント押し下げていた。
在庫投資は690億ドルだった。前期は694億ドル。在庫のGDPの寄与度はマイナス0.05%ポイントにとどまった。前期はGDPを0.91%ポイント押し下げていた。
政府支出は減速。前期は10年ぶりの大幅な伸びだった。
住宅建設投資は5.1%増と、7四半期ぶりにプラスへ転じた。