[ワシントン 16日 ロイター] – 米商務省が16日発表した9月の小売売上高は前月比0.3%減と、2月以来7カ月ぶりに落ち込んだ。製造業の弱含みがより広範な経済に波及している懸念が高まり、米連邦準備理事会(FRB)が今月も利下げを決める材料になる可能性がある。市場予想は0.3%増だった。
8月の小売売上高は当初発表の0.4%増から0.6%増へ上方改定された。
9月の前年同月比は4.1%増だった。
自動車とガソリン、建材、食品サービスを除いたコア指数は前月から横ばい。8月は0.3%増加していた。コア売上高は国内総生産(GDP)の消費支出に最も大きく連動するとされる。このところのコア指数の動きは、第3・四半期に個人消費がエコノミスト予想よりも大幅に減速したことを示唆する。個人消費は第2・四半期に年率で4.2%増と、1年半ぶりの大幅な伸びとなっていた。15カ月間続いている米中貿易摩擦が景況感に打撃を与え、設備投資が減り製造業が低迷する中で個人消費は米経済の主要な下支え要因だった。
プランテ・モラン・ファイナンシャル・アドバイザーズの最高投資責任者ジム・ベアード氏は「製造業部門の低迷が米経済の他分野に波及していることが裏打ちされた」と述べた。
9月の小売売上高の前月比の内訳は、自動車が0.9%減と8カ月ぶりの大幅な落ち込みとなった。前月は1.9%増加していた。ガソリンスタンドは0.7%減。ガソリンの値下がりを反映したとみられる。
電子・家電は横ばい。米アップルの新型iPhoneの発売は押し上げ要因にならなかった。オンライン小売り・通販は0.3%減と、18年12月以来の大幅な落ち込みだった。前月は1.2%増加していた。運動・娯楽は0.1%減だった。
一方、衣料は1.3%、家具は0.6%それぞれ増加した。外食は0.2%増だった。
9月は雇用やサービス業活動も鈍化した。個人消費も急速に減速している兆しとなった小売売上高統計を受け、経済成長が予想よりも大幅に鈍化するとの不安が浮上する可能性がある。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、ジェニファー・リー氏は「雇用の伸び鈍化が支出動向に影響し始めている可能性があるが、さらに指標を見極めて確認する必要がある」と述べた。
トランプ米大統領は11日、中国に対する制裁関税の引き上げを見送り、貿易戦争は一時休戦となったが、エコノミストはこれまでの関税が撤回されない限り過去最長期間続く景気拡大へのリスクは残ると指摘する。
国際通貨基金(IMF)は前日、米中貿易摩擦の影響で2019年の世界経済の成長率が08―09年の金融危機以来の弱さとなるとの試算を公表。米中が至った「第1段階」の合意について、詳細な内容が分からないとし、慎重な姿勢を示した。
個人消費が鈍化しているほか、米中が完全合意に至る可能性は依然として低い。英国の欧州連合(EU)離脱が混乱することも予想される。こうしたことを背景に多くのエコノミストは、FRBが11年目に入った景気拡大を持続させるために29―30日の会合で利下げを決めるとみている。FRBは7月に08年以来初めて利下げに踏み切った後、9月も利下げした。
ネーションワイドの首席エコノミスト、デービッド・バーソン氏は「低調な小売統計はFRB当局者に警告と受け止められ、今月のFOMCで利下げの根拠になるだろう」と述べた。
アトランタ地区連銀の経済予測モデル「GDPナウ」によると、第3・四半期のGDP伸び率は1.7%となっている。第2・四半期GDPは2.0%増と、好調なペースだった第1・四半期の3.1%増から鈍化した。第3・四半期GDPは30日に発表される。