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復活を遂げられるか!? 米トイザらス新業態の勝算と深謀

近年、米国では大手小売企業の経営破綻が相次いでいる。総合小売のシアーズ(Sears)、アパレルのナイン・ウェスト(Nine West)やアクセサリー店のクレアーズ(Claire’s)など名だたる企業がその歴史に幕を閉じた。それら以上に世界中に大きな衝撃を与えたのは、玩具チェーン大手の米トイザらス(Toys “R “ US)の破綻だろう。しかし同社は着々と、“復活”に向けて動き出している。

 「ブランド売却計画」から一転、新会社を設立し再起を図る

米トイザらスは新会社を設立し再起を図る(写真は日本国内の店舗)

 トイザらスが米連邦倒産法第11章の適用を申請したのは、179月のことだった。その後、184月に英国の店舗、6月に米国、8月にオーストラリアの店舗をすべて閉鎖。アジアや欧州、アフリカ地域では一部店舗を売却したが、引き続き営業を続けている。

 トイザらスは、「トイザらス」と「ベビーザらス(Babies “R” Us)」のブランド名を競売にかける予定だったが、これを取りやめて両ブランドを柱に事業を建て直す計画を裁判所に提出したことが1810月に明らかになった。同社の株主が、ブランド名の売却よりも、それらの可能性に賭けることで再建をめざす決断をしたのだ。

 こうして191月に新会社、トゥルー・キッズ・ブランズ(Tru Kids Brands:以下、トゥルー・キッズ)が設立された。CEOに就任したリチャード・バリー氏は旧・トイザらスのCMO(最高マーチャンダイジング責任者)などの役職を歴任した人物である。

 トゥルー・キッズは、国外の「トイザらス」「ベビーザらス」の店舗運営のほか、旧トイザらスが所有する「ジェフリー・ザ・ジラフ」などのオリジナル商品のブランドを継承。さらに同社は、アジアと欧州に合わせて70店舗を19年中に新規出店する計画と、米国内で新しい店舗を開発する予定を明らかにした。

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あのb8taとタッグ!新業態の中身とは!?

b8taと組んで体験型の新業態を開発へ

トゥルー・キッズ社が開発した新業態の店舗

 それから半年が経過した718日、トゥルー・キッズは年末のクリスマス商戦までに、“新生トイザらス”の店舗を米国に出店することを発表した。デジタル製品の体験型ショールームを運営するベータ(b8ta)とジョイントベンチャーを設立し、新店舗の開発を目下進めている。まず手始めに、テキサス州ヒューストンとニュージャージー州パラマスに1店舗ずつを出店する予定だ。

 この“新生トイザらス”は、売場面積は従来型の店舗よりも小さく、限られたスペースで人気玩具の中から同社が厳選した商品を陳列する。ベータが構築した「体験重視」の店づくりの手法を活用し、来店客は遊び場のような雰囲気の店内で、実際に玩具で遊べるようになっている。さらに、同じくベータの手法を用いて、店内での来店客の行動データを収集し、マーチャンダイジングやマーケティングに生かしていくものと思われる。

パートナーのb8ta(ベータ)社の店舗。お客はデジタルデバイスを実際に試用できると同時に、その行動データがマーケティングに活用されている

 「店舗では来店客参加型のイベントなども毎日行う予定だ」とバリーCEOは顧客参加型の店舗になることを強調。一方、バリーCEOとともに新生「トイザらス」を当面率いることになったベータのフィリップ・ラウブ社長は「環境が変わろうとも、おもちゃに触れたい、遊びたいという子供たちの願望は変化しない。子供たちだけでなく大人にも、楽しさを創出し体験を提供したい」とコメントした。

 ECだけでなく実店舗での体験価値向上を優先

 トイザらスは、ウォルマート(Walmart)をはじめとするディスカウントストア・チェーン、そしてアマゾン(Amazon.com)に代表されるECに買物客を奪われた末に経営破綻した。トゥルー・キッズは、EC事業に“傾倒”し過ぎることなく、実店舗での体験価値の向上を最優先することで、「トイザらス」に足を運んでもらうという戦略をとったと言える。

 トゥルー・キッズは今後も顧客体験の魅力を高めるため、積極的に新しいテクノロジーを導入する考えだ。バリーCEOは今後、「テクノロジー、店内での買物体験、顧客サービスに最も力を入れていく」と述べた。