英国最大手HCキングフィッシャーの元CIO、マイク・ベル氏が来日。同氏が2013年までにキングフィッシャーで取り組んだ、リアルタイム・リテイリングについて、本誌インタビューに答えた。
「キングフィッシャーは2年前にビジネスの安定化の時期から、次の新たな戦略へと移行した。その柱は3つ。1つ目は簡単化で、オムニチャネル化を含め、顧客が買いやすく、探しやすくするということ。これらを実現することで売上を伸ばし、マーケットシェアを高めることができると考えた。
2つ目が共通化。キングフィッシャーは9カ国でHCを展開する持ち株会社だが、そのうちの核となる50%の製品を共通化しようと考えた。同時に事業会社9社のベストプラクティスを横展開することで業務効率化を図る。利益率の改善が目的だ。
3つ目の目的が新規出店と新規エリアへの参入によるビジネスの拡大である。
私の役割は、いま掲げた企業戦略を、IT活用により支援していくことだった。その実行に当たって、従来のITプランをキープするのではなく、SAPが提供するリアルタイムコンピューティング機能を持った新しいインメモリプラットフォーム(SAP HANA)に乗り換え、新たなITプランを実行することを決断した。HANAは単なるデータベースではなく、ビッグデータの効率的な検索や、リアルタイムの分析が可能だからだ。
ITを活用して、企業戦略を支援するために、どんな目標を掲げ実行していくか。そのゴールを策定するに当たり、世界各国に散らばるキングフィッシャーの各業務部門の人材30人を集めて、ワークショップを開催し、「デザイン・シンキング」を行った。デザイン・シンキングとは、新たなイノベーションを生み出すための問題解決アプローチだ。
その結果、いちばん必要なソリューションは在庫の可視化と在庫日数の最適化により、粗利益率を高めることだと行きついた。HANAを活用すれば、仕入れと販売データを正確にひもづけし、サプライヤーに対する需要をより正確に予見することができ、それにより在庫保持日数を減らし、在庫最適化ができる。だから、仕入れ価格も下げられ、事業全体のキャッシュフローも改善できる。これらにより、2億4000万ポンドの削減効果があるとみている。キングフィッシャーは現在、その実現に向けて仕組みを運用しスタートさせている。」