アルペン(愛知県/水野敦之社長)は2024年6月期の連結決算を発表した。売上は増収となったものの期初計画を大幅に下回った。そのため、新規出店に伴う経費増や賃上げ、物流費の増加など販管費の増加分を吸収しきれずに、営業利益は大幅減益。こうしたなか、アルペンは「中期経営計画2027」を発表し、収益改善に取り組んでいく考えを示した。
24年6月期は増収減益で着地
アルペンは2月7日に発表した24年6月期第2四半期決算において、通期の業績の見通しを下方修正している。売上高は期初予想よりも125億円減の2524億円、営業利益を35億円減の32億円、当期純利益を32億円減の10億円とした。コロナ禍で需要が高まったゴルフ・キャンプ用品の売上が反動減に転じたほか、アパレル用品も残暑・暖冬の影響で販売が落ち込んでいたためだ。また、秋冬物の値引き販売などが利益を圧迫し、営業利益と当期純利益も大幅に下方修正している。
実際に通期決算は、売上高が対前年同期比3.4%増の2529億円 、営業利益が同34.2%減の33億円、当期純利益は同68.3%減の17億円と増収減益となり、ほぼ修正したどおりの数値で着地した。
売上高は既存店売上高が対前期比で0.1%増となり、新規出店の効果もあって過去最高を更新したが、期初に発表した売上予想とは大きく乖離する結果となった。執行役員管理本部副本部長の清水直輝氏は「スポーツ需要の回復を考えるともっと(既存店売上高を)伸長させたかった」と話す。23年8月、10~12月の既存店売上高が残暑・暖冬の影響で前年割れとなるなど安定しない状況が続き、それが既存店の伸びに大きく響いたかたちだ。
営業利益に関しては、旗艦店を含む15店舗(注1)の新規出店や、新倉庫の立ち上げなどへの投資や物流費の増加に加え、アパレル製品の値引き販売が影響し、減益となっている。清水氏は「経費の増加は見込んでいたものの、その分の売上高を確保できなかった」と説明した。
収益性改善のために打ち出す策とは
こうした状況を踏まえ、アルペンは25年6月期を起点とする「中期経営計画2027」を策定。売上の継続的な成長と収益性の改善をめざすための重点施策を掲げた。まず一番大きな取り組みとして掲げたのが既存店をリニューアルすることだ。1年につき平均10店舗の全面改装、同30店舗の部分改装の実施を予定し、売場や商品構成の刷新を図る。
次に挙げたのは商品構成の見直しだ。今後、好調なシューズ関連や競技系スポーツ商品の品揃えを強化する。一方で、販売動向が気温に左右されるアパレルは値引き販売の比率が高まっているため、取り扱いを縮小する。
また、自社ECサイトの再構築にも取り組む。現在、EC事業は外部のECモールが中心となっているところを自社ECサイト中心に切り替えていく。自社ECサイトは今後、検索や比較機能などの利便性の向上に努める。加えて、取扱商品の拡大やOMO(オンラインとオフラインの融合)の強化により、EC売上高を2倍にすることをめざす。
需給管理の強化も重点施策に織り込んだ。水野社長は「ここ数年需要の変動が大きくなっており、売上が計画から下振れした際の在庫数の調整がうまくいかないことが多くなった。販売動向の予測精度を高めて発注量をコントロールし、過剰な値引きを抑えていきたい」と話す。
さらに、収益改善や集客が見込めるプライベートブランドの強化にも取り組む。同社では開発体制の見直しを進めており、「高品質かつ低価格なラインアップが増え、 他社に先駆けた独自性の高い商品が生まれてきた」(水野社長)。さらに、生産地や委託工場の見直しなどによって原価の低減が進んできており、こうした取り組みをより加速する。
加えて、旗艦店のさらなる充実や人材育成などにも取り組む考えだ。
アルペンはこうした施策を実施することにより、25年6月期の売上高を2680億円、営業利益63億円、当期純利益32億円の増収増益を見込む。また、2027年6月期の売上高2850億円、営業利益125億円、当期純利益80億円をめざす。
注1)AlpenFUKUOKA(福岡県福岡市)とAlpenNAGOYA(愛知県名古屋市)のそれぞれを3業態出店として計上