「ゲオ」といえば、真っ先にDVDのレンタルショップが思い浮かぶ。実際に利用したことのある読者も多いだろう。時代は変わり、動画全盛の時代にあって果たしてゲオは生き残れるのか……そんな心配は杞憂だった。3R(リユース・リサイクル・リデュース)の波に乗り、ゲオホールディングス(愛知県/遠藤結蔵社長:以下、ゲオ)の業績は好調に推移している。本稿はゲオの2023年3月期決算を切り口に、リユース・レンタルビジネスの動向と同社の戦略について検証する。
レンタルからリユースにシフト
ゲオホールディングスは創業以来、CD・DVD・ゲーム・書籍のレンタルおよび販売、ゲームソフトの買取再販売といったビジネスを主体として、30年間にわたり事業を展開してきた。
同社は近年、新規事業であるリユース事業を急速に拡大している。その筆頭が、古着衣料を取り扱う「2nd STREET(セカンドストリート)」だ。最近は近所でセカンドストリートの店舗を見かけるようになったという人も多いだろう。それもそのはず、店舗数 は803とゲオ業態(1089)に迫る勢いだ(2023年3月末時点、フランチャイズ・代理店を含む)。
最新の通期はどうだったのか。2023年 3月期の売上高は3773億円で、対前期伸長率は12.7%増と2ケタ台に乗せている。ちなみに売上高は4期連続で過去最高を更新した。
商材別に業績を見ると、「Netflix」をはじめとした動画配信サービスが存在感を増し、レンタル市場がシュリンクする中、レンタル商材は対前期比14.1%減と大きく落ち込んだ。一方、リユース事業は衣料・雑貨商材が同17.2%増、ゲームソフトなどの「メディア」が同21.2%増と大きく伸びた。このほか、「Playstation5」をはじめとしたゲーム機などの新品販売も同14.1%増と好調だ。
一方、 収益性は売上ほど順風ではないようだ。2023年3月期の営業利益は、対前期比29.9%増の106億円だった。前々期から続いての増益となったが、その前は2期連続で大幅減益となっている。ちなみに2019年3月期の営業利益は156億円 で、現状の利益水準は当時の3分の2程度にとどまっている。
売上の伸びが利益に結び付かないのはなぜか。まず売上高原価率は、58.4%(2019年3月期) から62.2% (2023年3月期)と3.8ポイントも増えている。原価の安いレンタル商材が減り、原価率が高いリユース商材が増えたためだ。この間に売上高は847億円(対19年3月期比28.9%)も増えたのに対し、粗利益高の増加は207億円(同17.0%増) の伸びにとどまる。
一方で固定費的な性格の強い販管費は、258億円(同24.2%増) も増えている。リユース店舗の出店に伴う家賃増に加え、人件費・水道光熱費などのコストプッシュ要因が重なったかたちだ。
つまり、リユース事業への注力は消費者のニーズをとらえたという面で成功といえるかもしれないが、収益面では業務オペレーションの改善による販管費コントロールや原価率改善といった課題を残す格好だ。
セカンドストリート1000店舗体制へ
ゲオは2024年3月期の業績予想において、売上高が対前期比6.0 %増の4000憶円 をめざす。循環型消費の定着浸透と生活防衛意識の高まりを受け、リユースビジネスはますますの伸長が期待できる。そうした中、同社が成長の起爆剤と位置づけるのが出店戦略だ。成長事業のセカンドストリートは2024年3月末までに国内860店舗、中期的に1000店舗体制をめざすとしている。
収益面では店舗業務プロセスの標準化や簡素化、店舗要員配置の工数コントロール、在庫状況へのフレキシブル対応を通じて販管費抑制を図る。営業利益は、同22.4%増の130憶円を見込む
今のところ、安定的な成長が期待できそうなリユース商材だが、脅威となりそうなのがCtoC(消費者間取引)のフリマ市場だ。「ヤフオク」をはじめとするオークションサイトは、コレクター向けや趣味性の高いものが中心で、リサイクルショップとECとは住み分けができていた。
様相が大きく変わったのが、「メルカリ」をはじめとしたフリマアプリが存在感を見せるようになってからだ。フリマ市場が拡大していくにつれ、リサイクルショップの仕入環境が悪化することが懸念される。フリマの登場で、今までは地元のリサイクルショップを選ばざるを得なかった地方のユーザーは、確実に選択肢が増えた。地域密着型ショップはどこの地方でも仕入れが厳しくなり、中には廃業するところも現れている。
ユーザーは「ネットで便利だから」という理由だけでフリマを利用しているわけではない。無視できないのが、ユーザーがリアル店舗に長年抱いてきた「不信感」、つまり買取の不透明性だ。実際に、「リサイクルショップで買取拒否だったアイテムがフリマアプリで高く売れた」といった話を耳にしたことのある人も多いだろう。
今のところ、リユース市場のパイ自体が大きくなっているため、リアルとネットとの軋轢はそれほど見られていない。リアル店舗でリユース事業を展開する事業者は今のうちに「リアルならでは」の魅力をみがき、存在感を確立したいところだ。ゲオの場合も、「スマホ」「アパレル」という専門性に加え、リアル店舗ならではの利便性や楽しさ、知名度や企業規模からくる信頼性をいっそう高められるかに注目だ。