[東京 1日 ロイター] – 日銀が1日発表した3月短観によると、大企業・製造業の業況判断指数(DI)はプラス5、非製造業はマイナス1だった。ともに3期連続の改善となったものの、前回12月調査からの改善幅は製造業の方が大きく、2極化の構図が出ている。
大企業・製造業の業況判断DIは、2019年9月以来の水準。輸出・生産が伸びる中、電機関連、機械関連、自動車関連など幅広い業種で改善した。前回12月調査のマイナス10から15ポイント改善、ロイターの予測値ゼロも上回った。「化学」から半導体向け材料や自動車向け素材が好調といった声や、「生産用機械」から米国、中国向けの工作機械の受注が増えているといった声が出ていたという。
大企業・製造業の先行き判断DIはプラス4と、1ポイントの悪化を見込む。業種別で「自動車」は3月調査のプラス10からプラス6へ、4ポイント悪化する見込み。日銀の担当者は「ルネサス火災の影響がどこまで織り込まれているかはよく分からない。半導体不足という声は聞かれている」と説明した。
大企業・非製造業の業況判断DIは、20年3月以来の水準。前回調査に比べて4ポイント改善し、予測中央値のマイナス5を上回った。非製造業の中でも2極化の傾向がみられ、宿泊・飲食サービスはコロナ感染再拡大や人手の減少などで業況悪化が目立った。
大企業・非製造業の先行き判断DIはマイナス1と横ばい。コロナ禍の影響に関する先行き不透明感を懸念する声が幅広く出ているという。
大和証券のシニアエコノミスト、末広徹氏は「先行き判断DIをみると、製造業が1ポイント悪化、非製造業が横ばいと、それほど変化はない。これまでのペースで回復していくのは難しいところまできたと言えそうだ。さらなる回復にはコロナで苦戦している業界が良くなるか、製造業等でアップサイドの動きがみえてくるかにかかっている」と指摘している。
大企業の設備投資計画、21年度はプラスのスタート
21年度の設備投資計画では、大企業・全産業が前年度比プラス3.0%。ロイターがまとめた市場予想のプラス1.4%を上回った。20年度(計画)が前年度比マイナス3.8%と弱い着地となった反動が出たとみられる。日銀の担当者は「足元の輸出や生産が伸びている中、製造業で設備投資が増えているという文脈もあるが、20年度にマイナスになった部分が期ずれして乗っている部分もあると考えられる」と説明した。
企業金融では資金繰り判断DIが大企業、中堅企業、中小企業でいずれも改善。金融機関の貸出態度は大企業、中堅企業が前回から改善。中小企業は横ばいだった。
事業計画の前提になっている想定為替レート(全規模・全産業)は、21年度のドル/円が106.07円、ユーロ/円が123.10円だった。ドル/円は20年度の106.66円に比べてやや円高、ユーロ/円は121.76円から円安の設定となっている。
企業の物価全般の見通しでは、1年後が前年比プラス0.4%、3年後はプラス0.8%、5年後はプラス1.0%と、いずれも前回を0.1%ポイント上回った。
今回の短観の調査期間は2月25日から3月31日。回答基準日は3月12日で、7割強から回収していた。