ヤマザワ(山形県/古山利昭社長)は10月16日、2021年2月期第2四半期の決算説明会を行った。前期まで2期連続の最終赤字となっていた同社だが、新型コロナウイルス(コロナ)の感染拡大に伴う需要の急増により、上期は一転して大幅な増収増益となっている。
上期増収増益、コロナ禍で収益向上
ヤマザワの上期連結決算は、営業収益576億8300万円(対前年同期比105.0%)、営業利益14億7700万円(同604.5%)、四半期純利益8億3700万円(同1156.6%)で増収増益となった。コロナによる需要増や、販促の見直し・在庫削減などの効率化、不採算店舗の閉店を進めたことが大幅増益につながった。
事業別では、SMの「ヤマザワ」の既存店売上高が対前年同期比106.5%、ドラッグストアの「ヤマザワ薬品」が同101.8%と前年を上回っているが、秋田県を本拠にSMを展開するグループ傘下の「よねや商事」のみ同97.1%と前年割れ。ヤマザワとヤマザワ薬局はコロナ需要の恩恵を受けた形だが、よねや商事はコロナによる帰省自粛やイベント中止による影響の方が上回った。
グループの80%の売上高を占めるヤマザワの上期の傾向として、客単価が同107.3%と伸びたことが挙げられる。客数は上期全体で同100.0%と前年と変わらないが、コロナ禍でのまとめ買いや、単価の高い大容量サイズの商品が売れたことが既存店売上高の増加につながった。
また、山形県内の店舗が伸び悩んだのに対し、宮城県内の店舗では客数・売上高ともに好調だった。宮城県では感染者が多く、消費者の防衛意識が早くから高かったことが好調の原因のひとつだが、山形県では帰省自粛・イベント中止によるあおりを強く受けたとみられる。
不採算店舗の閉店と販促への注力で収益向上を狙う
ヤマザワの上期決算は増収増益となったものの、かねてよりの競争激化や人口減少・高齢化、仕入れ価格の上昇、人手不足などの苦境にコロナ対応も加わり、「大変な期だった」と古山利昭社長は振り返る。ヤマザワの問題点は「収益力の低さ」とも古山社長は語り、収益力回復のために上期は不採算店舗の閉店を進めた。
上期に閉店した店舗はヤマザワ4店舗、ヤマザワ薬品4店舗の8店舗。うち、「ヤマザワ泉が丘店」(宮城県仙台市)など完全閉店する店舗が4店舗で、残り4店舗は建物の老朽化による完全建替のための一時閉店となる。同時に、集客が見込めそうな立地への新規出店も行っている。新規に出店したのは「よねや大曲中央店」(秋田県大仙市)、「ヤマザワ鶴岡茅原店」(山形県鶴岡市)など4店舗。上期末の店舗数はグループ合計で142店舗となった。
既存店舗では収益向上のためにさまざまな施策を行った。コロナによって生鮮食品・グロサリー共に売上が伸びたが、バラ販売が難しくなったことなどによって、今まで注力してきた総菜が不調になっている。そこで、訴求力向上のため、店舗で取り扱っている生鮮食品を使用した総菜の商品化に取り組んだ。
販促の面では、今までは水曜日(水曜均一祭)・日曜日(ポイント10倍)に来店を集中させる戦略を取っていたが、平日の底上げ対策として金曜日にも拡大した。また、EDLP(エブリデー・ロープライス)や、加工品や日用品を中心とした“期間限定スペシャルプライス商品”の対象を拡大し、買上点数の向上にも努めた。コストカットの面では、業務の効率化と在庫の適正化を行ったことで、約5億円の経費削減に繋げることができた。
また、コロナによる影響を特に強く受けたギフト関連商品にも注目した。例年であればお盆に向けて売上が増加するコーヒー、ビール、油などのギフトが軒並み苦戦。代わりに、帰省を自粛した家族へ贈る品として「産直ギフト」が伸びた。上期ではサクランボの産直ギフトが特に好評で、下期では芋煮セットや新米の産直ギフトに力を入れ需要を取り込んでいく。
通期黒字化へ向けた方針
上期、業績が回復したヤマザワだが、「感染動向、経済動向どちらも見通しが難しい。小売業界は上期明暗はっきり分かれたが、今後の展開についてはまだまだ不透明な部分が多い」と古山利昭社長。不採算店舗の閉店は苦渋の決断だったが、従業員を既存店に集め、競争力を向上させる方針を取った。「一店舗一店舗丁寧な販促を行い、売場のリニューアルや品ぞろえで収益向上に繋げられたら」と古山社長は語った。