[東京 11日 ロイター] – ソフトバンクグループ(SBG)が11日に発表した2020年4―6月期の連結純損益(国際会計基準)は前年同期比11.9%増の1兆2557億円の黒字だった。Tモバイル株の売却関連益が貢献したほか、株式市場の復調を追い風に、1―3月期の1兆4381億円の赤字から大きく改善した。前年同期は1兆1217億円の黒字だった。
営業利益の表示とりやめ
孫正義会長兼社長はオンライン会見で「第1四半期の出だしとしては、まあまあいい出来ではないか」と述べた。連結業績全体に占める投資活動の重要性が一層高まったとして、セグメント管理区分を変更したほか、営業利益の表示を取り止めたが、孫氏は「営業利益は大体5000億円強で、我々が見込んでいたものより少し多めに達成できた」と説明した。同社は通期見通しは示していない。
営業利益や純利益より、いくら株主の資産が増えたかの方が重要とする孫会長が「唯一最大の成績の指標」とする株主価値は、3月末の21.7兆円が、8月11日には24.4兆円に2.7兆円増えた。
投資利益は9830億円で、このうち持株会社投資事業ではTモバイル株売却関連で4219億円の利益を計上し、投資利益は6505億円だった。ソフトバンク・ビジョン・ファンドなど、SBIAの運営するファンドからの投資損益は、直前四半期から1.4兆円改善し、2965億円の利益となった。投資株式売却による実現益や上場投資先を中心に未実現評価益を計上した。ビジョンファンドは、完全な黒字基調というには時期尚早としたが「着実に最悪の状態よりは改善してきた」との認識で、投資先の5―6社が具体的な上場準備に入っているとも明かした。
このほか、スプリントが子会社から外れたことに伴う支配喪失利益7364億円などが純利益に貢献した。
「防御=現金」、コロナ禍に備え
孫氏は会見で「防御は戦うために欠かせない大変重要なもの。ソフトバンクの防御は現金」と話し、新型コロナの感染拡大の第2波、第3波への備えとして手元資金を厚くする考えを示した。平常時の純負債/保有株式の比率(LTV、ローン・トゥー・バリュー)を25%未満で運用する方針を示していたが、コロナ禍の下では11%未満で運用するとの考えを示した。ワクチンや抗体が十分に行き渡るまでは危機的状況と捉えて、取り組みを継続する。
4.5兆円の資産売却・資金化の計画は8月3日までに4.3兆円分を実施した一方、3月の発表から4四半期にわたり実施する予定としていた2兆円の自社株買いは、市場動向などの不確実性などに鑑み、取得終了が21年4月以降となる可能性があるとした。孫会長は「コミットしたことはなんとしてもやるという姿勢で臨む」などと述べ、理解を求めた。
投資運用子会社を設立
投資運用子会社を設立したことも明らかにした。目的は余剰資金の運用とアセットの多様化で、流動性の高い上場株を運用する。4.5兆円の資産の資金化が予定どおりかそれを上回る規模のめどが立っている一方、社債の償還期限には間があるとし、余剰部分を用いる考え。対象はアマゾンやアップル、フェイスブックなど主にIT関連で「流動性が高く、いつでも現金化できるものの少数株主として、市場から買っている」とした。直接市場から買うほか、リスクを抑えるためデリバティブを積極活用するという。
資本金600億円で、株主構成はSBG67%、孫氏は33%。「自らリスクを取って運用会社を設立する。利益が出たら堂々とリスクに対して応分の収益を投資家として得ていく」とした。約30銘柄でテスト的な運用を開始したという。中長期的な取り組みと位置づけ「できるだけ情報革命の分野に絞る。ドメインとして詳しい分野だし理念を持っているので、そこに集中していきたい」と述べた。
ビジョンファンド2の進捗については同社の資金で着実に投資を続けているとし、10社ぐらいに投資したと説明した。
一方、保有する英アーム株式について「興味があるという相手が現れたので、一部か全部の売却も選択肢の一つとして検討を始めた」と述べた。当初の計画通りアームを上場することも選択肢で「単純な売却でなく、継続的なビジョンの追求も選択肢」とした。現金と株式の組み合わせもあり得るという。交渉相手や金額はコメントを控えた。