配送効率のアップは企業の利益を押し上げるだけでなく、環境保全にもつながる取り組みです。商品パッケージも内容量に合わせてコンパクトにした方が環境保全にもつながるし、店頭でも数多くアイテムを陳列できるようになり、効率も高まります。一方、ナショナルブランドメーカーにとっては、“商品の顔”であるパッケージを小さくすることは商品のアピール力の低下を招きかねないという意見もあるでしょう。今回は商品パッケージが大きく変わるかもしれない、その潮流について解説します。
棚は舞台、商品はタレント すると店は何役か?
「スカスカ撲滅運動」を、ご存知ですか? CGCグループ(東京都/堀内要助社長)が取引先メーカーに提案しているものです。商品の包装を可能な限りコンパクトにすることで、流通段階および店頭における業務効率の改善や、環境保全につなげようという運動です。
パッケージはコンパクトな方が、売場により多くの商品が並びます。実際、商品パッケージは横向きにデザインされていても、店頭で縦に陳列する事例をときどき見かけます。CGCグループに限ったことではありません。コスト的には製配販のすべてにメリットをもたらすはずですし、プラごみの量産を良しとしない国際的な風潮もあります。この運動を否定する理由は、どのメーカーにもないでしょう。
それでも、メーカーには悩ましい問題があります。売場で自社製品を目立たせるために、可能な限り手段を尽くしてきた経緯が、今のパッケージに行きついているからです。
しかし、棚に並ぶ自社の商品を目立たせたいというメーカーの思いは、小売とは決して相入れないものです。両者は立場が違います。その立場の違いは、商品への視点を全く異なるものにします。
例えで考えてみましょう。店頭の棚を舞台に見立てれば、商品は役者か芸人です。これからも舞台に立ち続けるために、彼らは売れなければなりません。顧客の目を引き、手を伸ばしてもらわなければいけません。お笑い芸人やストリートミュージシャンが大声を出して注意を引こうとするように、商品は目立たなければなりません。
そのような商品に対し、店の関係者は舞台の監督者、またはプロデューサーでしょう。売れっ子の役者、つまり売れ筋商品は特別かもしれませんが、個々よりは舞台トータルの調和や運用効率を重視します。
メーカーは、タレントを抱える芸能プロダクションになるでしょう。タレントである商品を育て、舞台で輝き続けるために努力します。もっとも、売れないタレントには見切りをつけ、新たな金の卵の発掘に勤しむという非常な面もありますが・・・。
棚は舞台、商品はタレント、メーカーは芸能プロダクション、店は監督やプロデューサー。そう思って売場を見てください。棚に並ぶ生き残りをかけたタレントたちは、舞台の上でなかなかやかましく自己主張をしているように見えてきませんか?
商品パッケージが必要最小限とは言えないくらいに膨れ上がる、いわばスカスカになっていったのは、目立たねばならないナショナルブランド(NB)商品の宿命がもたらす必然的な結果かもしれません。しかし、店頭のルールは変わろうとしています。
商品が、購入後も自己主張するのは問題?
ネット通販では、リアル店舗の売場ほどに目立つ必然性がありません。アスクル(東京都/吉岡晃社長)の個人向けECサービスのLOHACOは、消費の場である家庭と調和するデザインをメーカーに求め、さまざまなコラボ商品を開発しています。ホームセンターのカインズ(埼玉県/高家正行社長)も、家でストックする際の見栄えや利便性といった観点でNBのオリジナルパッケージを充実させています。
もしくは無印良品のように全商品がプライベートブランド(PB)であれば、店頭で個々の商品が自己主張する理由もなく、その商品群は購入後の家庭内でも独自のトーンでまとまります。
NBが購入後に自宅でも自己主張していることに気づき、その主張が居住空間に必ずしも必要ではないかも・・・と考える消費者が増えているように思います。インスタ映えを重視する生活スタイルが、その傾向に拍車をかけているかもしれません。
そうはいってもNBは目立たなければならないでしょう。だからといって目立てばいいというものではありません。生活者の意識が変われば、好感をもたれる目立ちかたのルールも変わるようです。店の効率性、地球環境、生活者の美意識など、多方面から商品パッケージのルールは変化を迫られていると感じる昨今です。