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「海のエコラベル」を知ってますか?イオンリテールが MSC認証取得商品を増やす理由

イオンリテール(千葉県/井出武美社長)は1月21日、持続可能な漁業で獲られた水産物であることを示す国際認証「MSC」を取得した岡山県産の生カキを発売した。これにより、同社のMSC認証取得商品は、25魚種43品目となった。MSC認証は「海のエコラベル」とも呼ばれる国際認証で、世界的に注目が集まっている。東京オリンピック・パラリンピック開催に伴い、同社は消費者に対し、MSC認証商品の啓蒙に力を入れる。

 

MSC認証を取得した岡山県虫明産生カキを鮮魚売場に揃える

 

世界初となる「垂下式カキ漁」がMSC認証取得

 イオングループが啓蒙するMSC認証は、どういったものか。

 MSC認証とは、国際非営利団体の海洋管理協議会(MSC:Marine Stewardship Council)が管理する認証制度で、持続可能な漁業に対して与えられる。また、MSCと同じく国際非営利団体である水産養殖管理協議会(ASCAquaculture Stewardship Council)が管理する、養殖産業を持続可能なものに変革することを目的としたASC認証制度もある。

 イオンリテールが取り扱いを始めたのは、岡山県瀬戸内市での垂下式カキ漁で獲られたカキだ。マルト水産(広島県/小久保公博社長)が邑久町漁業協同組合と一体となり、垂下式カキ漁でMSC認証を取得した。

 カキ漁がMSC認証取得はアジアでは初で、筏(いかだ)などから水中にカキを吊るして生育する「垂下カキ漁」が取得するのは世界初となる。

 垂下式のカキ漁は、台風などの天候の影響を受けやすいため技術的なハードルがある。だが、広範囲に筏を設置できるうえ、生育状況に応じてローテーションする利点もあり、日本では大半の漁業者が同方式を採用している。

 認証を取得したカキは、「MSC認証 岡山県虫明産 生かき」(110g、本体価格398円)として、首都圏と岡山県の「イオン」、「イオンスタイル」の54店舗で販売する。

2020年のオリンピックを視野に寿司を展開

 

「MSC認証 岡山県虫明産 生カキ(生食用)」は1パック110gで本体価格398円で販売する。パッケージには認証マークが入っている

 イオンリテールは、2006年からMSC認証やASC認証を取得した魚種の取り扱い拡大に向け、生産者と連携している。従来取引のあった生産者に対して働きかけながら、認証取得への橋渡しとなる役割を担ってきた。

 イオンリテール商品企画本部水産商品部の松本金蔵部長は「2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、認証の取得を進め、取り扱い魚種や品目を増やしてきた。今回に続き、206月にはMSC認証を取得している魚を使った寿司などの新商品を発売する計画だ」と話す。

 イオンリテールがかねてより販売している宮城県産カキは、ASC認証を取得して3年目になる。最近は、戸倉だけではなく石巻湾一帯へと生産が拡大したこともあって、生産量は認証取得時の35倍になっているという。

 今回MSC認証を取得した岡山県産カキについても、今後取り組みに賛同する生産者が増えることによりカキの生産量の増加が見込まれ、イオンリテールでは205月までに約110トンを提供する予定だ。今後岡山県産カキの生産量が増えれば、東日本は「宮城県産」、西日本は「岡山県産」というかたちで供給する方針としている。

 「今後は取り扱い品目を増やすほか、生産量増加の可能性も見ながら、鮮魚部門におけるMSCASC認証商品の比率を15%から20%程度に上げることをめざす」(松本部長)

 松本部長によれば、12年のロンドンオリンピック・パラリンピック開催時は、会場内で提供されるフィッシュ&チップスに使う水産物がMSC認証を取得していたという。東京オリンピック・パラリンピックにおいても、MSC認証商品が提供されるかどうかが注目を集めている。

 日本においては、MSC認証の普及はまだ途上にある。国内小売最大手のイオングループがMSC認証商品の販売を拡大すれば、日本でも普及が加速しそうだ。