2023年の国内小売業売上高1000社の総売上高は、対前年比1.8%増、昨年から約兆3875億円増加し、78兆6459億円だった。直近2年間、小売業1000社の総売上高は減少が続いたが、人流回復に伴う消費の活発化、ドラッグストアを筆頭とする成長業態の好調などにより、今年は増加に転じている。昨年に続き、巣ごもり特需の反動減、「収益認識に関する会計基準」(新収益認識基準)の適用により一部の業態、企業の売上高が大きく目減りするなどのマイナス影響があったものの、それを跳ね除けたかたちだ。
ローソンを抜きファストリが3位に浮上
2023年は、売上高ランキング上位の顔ぶれに変化が見られた。第1位はセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)、第2位はファミリーマート(東京都)とトップ2社は昨年と同じだったものの、昨年4位のファーストリテイリング(山口県)がローソン(東京都)を抜いて3位に浮上した。
続く5位は総合スーパー(GMS)最大手のイオンリテール(千葉県)、6位は家電量販店最大手のヤマダホールディングス(群馬県)で昨年と同じだったが、昨年7位だったイトーヨーカ堂(東京都)が、新収益認識基準の適用の影響で売上高が大きく目減りし、トップ10圏外に後退。DgS最大手のウエルシアホールディングス(東京都)、ドラッグストア大手のツルハホールディングス(北海道)が昨年から順位を1つ上げ、7位、8位につけた。
9位と10位もドラッグストア勢で、9位は経営統合の連結効果により大幅増収を果たしたマツキヨココカラ&カンパニー(東京都)、10位は食品強化型フォーマットでオーガニックな成長を続けるコスモス薬品(福岡県)が新たにトップ10入りしている。
食品スーパーの半数以上が減収に
業態別に総売上高を見ていくと、主要10業態のうち前期を上回ったのは、コンビニエンスストア、ドラッグストア、衣料品専門店、ディスカウントストア(DS)の4業態。全業態の総売上高に占める業態別シェアでもこの4業態がシェアを伸ばしている。
食品スーパーの総売上高は18 兆4473億円で、前年から0.2 %減の微減となった。業態別シェアは23.5%と昨年から0.5ポイント(pt)減となったものの、依然として高いシェアを維持している。
314社中、減収となったのは166社。なお本特集では、上場企業や上場子会社など、新収益認識基準を適用した影響で業績の前期比較を公表していない一部の企業をのぞき、単純計算で業績の増減率を求めている(ただし、新収益認識基準の適用で売上高が大きく目減りするGMSと百貨店はのぞく)。新収益認識基準は上場企業などでは強制適用となっているが、非上場の中小企業では任意適用であるため、あくまで参考として参照されたい。
食品スーパーの22年度決算では、ヤオコー(埼玉県)が増収増益記録を「34」に伸ばすなど逆風下でも成長を続ける企業も見られたが、売上高500億~600億円以下の中堅、中小チェーンは減収が目立ち、事業環境が厳しさを増しているのがうかがえる。コストコントロールか、デジタル活用か、それとも合従連衡か。企業間格差が拡がるなかで、アフターコロナの戦略をどう組み立てるか。トップの経営手腕が問われている。
GMSは新基準適用の影響大
一方、新収益認識基準により、総売上高を大きく落としたのがGMSだ。12社の総額売上高は5兆4493億円と前年から14.0%減少した。ただ、人流回復に伴いGMSの業績は回復傾向にあり、首位のイオンリテールも23年2月期決算で3期ぶりの営業黒字化を果たしている。
9月にイトーヨーカ堂(東京都)が、同じくセブン&アイ・ホールディングス(東京都)傘下のヨーク(東京都)を吸収したほか、24年にはフジ(愛媛県)、フジ・リテイリング(広島県)、マックスバリュ西日本(広島県)の統合新会社が設立されるなど、企業再編も激しいGMS。再編の動きがどう影響してくるか、来年のランキングに注目だ。
次ページ以降、売上高のほか、売上高純利益率、自己資本比率、従業員一人当たり売上高などのランキングを業態別・地域別に掲載している。業態間格差、企業間格差がますます広がっていくなか、なぜあの企業は“勝ち組”となれたのか。各指標から読み解いてほしい。
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