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発表!ドラッグストア食品売上高&構成比ランキング

ドラッグストア各社では、日配品や加工食品を中心に食品の取り扱いを強化する動きが拡大している。食品を低価格で販売することで集客を図り、粗利益率の高い医薬品や化粧品のついで買いによって利益を確保するというビジネスモデルが確立されている。ここでは、上場ドラッグストア企業の食品の売上高および売上高構成比のランキングを発表。注目企業の食品戦略についても見ていきたい。※HD=ホールディングス

売上トップはやはり九州のあの企業!

■上場ドラッグストア 食品売上高ランキング ※各社の最新決算データより作成

順位 企業名 売上高(百万円) 増減(対前期比:%)
1 コスモス薬品 343,809 9.7
2 ツルハHD 174,698 32.0
3 ウエルシアHD 172,971 14.5
4 カワチ薬品 122,478 ▲ 1.3
5 クリエイトSDHD 112,939 7.7
6 スギHD 109,648 6.7
7 クスリのアオキHD 99,294 16.0
8 Genky DrugStores 63,635 14.3
9 マツモトキヨシHD 51,820 ▲ 0.2
10 ココカラファイン 39,615 3.2

 まずは、上場各社の食品売上高ランキングを見ていこう。

 トップとなったのは、コスモス薬品(福岡県)だ。19年5月期の食品の売上高は対前期比9.7%増の3438億円に上り、2位以下を大きく突き放している。ちなみにこの3438億円という売上高を食品スーパーの売上高ランキングにプロットしてみると、万代(大阪府:19年2月期の売上高3461億円)とバロー(岐阜県:19年3月期の売上高2919億円)のちょうど間、順位にして7位となる(ダイヤモンド・チェーンストア9月15日号「日本の小売業1000社ランキング」より)。このことからも、コスモス薬品が扱う食品の売上規模の大きさがわかるだろう。

 コスモス薬品に次ぐ2位に入ったのが、北海道を本拠に全国に店舗網を広げているツルハHDだ。同社の食品売上高は1746億円で、対前期比32.0%増と急伸している。これは、杏林堂薬局(静岡県)の持株会社である杏林堂グループ・ホールディングス(同)を17年9月に連結子会社化したことが大きい。杏林堂薬局は一部の大型店舗で生鮮をフルラインで販売するなど食品の取り扱いを強化している。18年度のツルハHDの決算では、この杏林堂薬局の売上高が通年で加わったことで、食品の売上高も急増したとみられる。また、18年5月には愛知県内で店舗を展開し、かねてから食品の販売にも力を入れていたビー・アンド・ディーもツルハHDに傘下入りしている。

 全体的に見ると、上位10社中8社が食品の売上高を前年から伸ばしており、2ケタ増も目立つ。ドラッグストア企業が食品の売上を年々伸ばしていることが見て取れる結果となった。

売上構成比ではゲンキーが首位に

■上場ドラッグストア 食品売上高構成比ランキング
※各社の最新決算データより作成

順位 企業名 売上高構成比 増減(pt)
1 Genky Drugstores 61.2 2.5
2 コスモス薬品 56.3 0.1
3 カワチ薬品 46.2 ▲ 0.1
4 薬王堂 41.9 0.9
5 クリエイトSDHD 39.7 0.3
6 クスリのアオキHD 39.6 0.9
7 サツドラHD 34.9 0.5
8 スギHD 22.4 ▲ 0.1
9 ツルハHD 22.3 2.5
10 ウエルシアHD 22.2 0.5

 もっとも、ドラッグストア各社は各エリアで積極的な出店を続けており、全体の売上高も増加傾向にある。それに引っ張られるかたちで食品の売り上げも伸びているという側面もある。

 そこで注目したいのが、全体の売上に占める食品売上高の割合を示した、食品売上高構成比ランキングだ。売上規模ではなく構成比で見ることで、各社の食品販売に対する姿勢がよりわかりやすく見えてくる。

 同ランキングでは首位となったのは、福井県を地盤に北陸・東海地方で店舗を展開するGenky DrugStores(以下、ゲンキー)だ。同社の19年6月期の食品売上高構成比は61.2%。ドラッグストアとしては前人未到の60%の大台に乗り、売上高ランキングでは圧倒的トップであるコスモス薬品を抑えて1位となっている。前期からの伸び率も2.5ポイントと伸長。M&A(合併・買収)効果が比較的大きいと見られるツルハHDをのぞき、その他の企業はほぼ前年並みで推移していることからも、ゲンキーの伸びが顕著となっている。

 ゲンキーの特徴は、生鮮食品の販売に力を入れている点だ。食品について2000年頃から導入を進めていたが、さらなる競争力向上をねらって17年に生鮮食品の販売を開始。現在ではすべての店舗で生鮮食品を取り扱っている。さらに特筆すべきは、生鮮食品を自前で運営している点。今年に入ってからは、岐阜県安八町に約70億円を投じて、生鮮のプロセスセンターを併設した総合物流施設の稼働を開始するなど、もはや食品スーパーと遜色のない体制で食品の販売を行っている。

 ゲンキーと同じく北陸を地盤に、関西から東北にかけて店舗網を持つクスリのアオキHD(石川県)も、食品売上高構成比が39.6%に上る。同社は一部の大型店舗で生鮮と総菜をフルラインで扱っている。青果以外はコンセッショナリー(名前を出さない専門店テナント)による運営だが、鮮度管理や人材教育などの新たなオペレーションを付加することなく、鮮度や品質が高い商品を販売することを可能としている。

 こうした、生鮮を大きく扱うようなドラッグストアの店舗展開はまだ局所的といえる。しかし、そうした店舗があるエリアでは「野菜や肉をドラッグストアで買う」という消費行動は日常に浸透しつつある。鮮度や品質も日々向上しており、食品スーパーに比べて著しく劣るようなことはない。それでいて低価格で、さらには医薬品や化粧品、日用品もワンストップで購入できるという利便性が加わる――。”生鮮強化型”のドラッグストアは、地域住民にとってはこのうえなく便利な店だが、食品スーパーにとっては大きな脅威となっていることは間違いないだろう。食品スーパーは、価格対策や品質のさらなる向上はもちろん、買物が楽しくなるような商品政策や売場づくり、調理実演を交えたメニュー提案、接客などあらゆる面で早急に対抗策を講じる必要がある。