「食品表示」は消費者との信頼の絆
食品流通業における使命のひとつに、「食の安全の確保」があります。原料を国内はもとより、世界各国から調達し、製造加工も国内外の工場で行う現在の食品産業としては、製造加工される食品が安全であり、かつ消費段階で適正な取り扱いをするための情報を消費者に知らしめることが必要です。
消費者が食品を購入する際、重要な情報源となる「食品表示」を通して、価格とともに、消費期限・賞味期限、原材料名、内容量、輸入品の原産国など、さまざまな表示項目を参考にして商品を購入していることがわかります(図表参照)。
最近では有職女性の増加や少子化、高齢化の進行に伴い、外食や中食の利用比率が増えています。その比率(食費の占める割合)は45%と約半数を占めといわれ、あるデータによればこの比率は7割近くまで上がるだろうと予測されています。野菜や精肉などの生鮮品を調理する機会が減り、外食に加えて、簡便性の高い総菜や加工食品などの利用が増えていることは、昨今の総菜商品の伸びを見るとより実感するものです。
一方、食品産業界では近年、食品表示に関連する事故・事件が増えています。その原因はグルーバル化した原料調達、国内のみならず多国間に渡る製造加工、高度化した物流システムなど、製品の品質管理が多段階かつ多様化したためとも言われています。そのため消費者には、食品の原産地や品質に関する情報の提供の一環として食品表示に対する関心は非常に高くなっています。生産者から消費者までのつながりを「フードチェーン」といいますが、消費サイドからは、生産者から加工業者、流通といった供給サイドの一連の流れがわかりにくく、それが不安につながっているのが現状です。
食品表示は、生産者をはじめ、仕入れた食材を加工するメーカー、消費者に商品を届ける流通や外食といった提供サイドの一連の動きのすべてに関係します。生産者から消費者まで、一連の情報のバトンタッチの中で、一つでも不適切なものがあると消費者に正しい情報が伝わりません。そのため食品に関わる事業者はつねに、安全・安心な食品を提供することが求められており、これを消費者に伝える上で、食品表示は重要な役割を果たしています。
一般社団法人 食品表示検定協会は、食品表示に関する知識の普及・啓発を行うとともに、食品表示に関する知識を有する人材の育成、資質の向上などを目的に2009年に設立されました。協会が主催する「食品表示検定」では、生産者や食品メーカー、小売業、卸売などの流通業界関係者に加えて、消費者を含む人々に対して、食に関する知識の提供を通じ、食の安全・安心の向上に寄与したいと考えています。
「食品表示」を活用するのは消費者ですが、食品流通を担う、食品メーカー、中間流通、小売業のマーケッターの方々は、少なくともお客様である消費者以上に食品表示のルールを理解しておくことが必要です。これまで、マーケティング戦略のなかで重要視されてきた「価格」「品質」「プロモーション」の他に「食品表示」という概念を今後は組み込んでみてはいかがでしょうか?
消費者は正しい食品表示に関する知識を高め、安全・安心な食品を選択したいという要望が年々強くなっています。流通企にかかわる皆様にとって、食品表示の基本的な知識が網羅されており体系的に理解できる「食品表示検定」を学ぶことは、消費者への信頼に応え、結果として会社や店舗の信頼度向上につながるでしょう。
【図表】消費者が商品購入の際に参考にする項目
「一般社団法人 食品表示検定協会」とは
食品表示に関る人材の教育、食品表示の向上に関する情報収集・分析等、将来の消費者となる子供たちへの学習機会の提供を行うために設立された一般社団法人
■URL http://www.shokuhyoji.jp/
池戸重信
一般社団法人 食品表示検定協会 理事長
農林水産省食品流通局消費生活課長、独立行政法人農林水産消費技術センター理事長、公立大学法人宮城大学食産業学部教授、同大学副学長・食産業学部長等を経て、現在同大学名誉教授、日本農林規格(JAS)協会会長、クリエイティブ食品開発技術者協会理事長等。この間、消費者庁「食品表示一元化検討会」座長、内閣府消費者委員会食品表示部会委員等を務める。
文章構成:石山 真紀(ライター)