文=安部 隼人
帝国データバンク 東京支社情報部情報取材課
お店に行かなくても買物できることから、高齢化が進む中、シニア層を中心に利用者数の増加が見込まれる通信販売業界。帝国データバンクは、通信販売を専業とする174社(売上高10億円以上)の2013年度(13年4月~14年3月)の売上を調査した。13年度の総売上高は約2兆1161億円となり、前年度を3.2%上回る結果となった(図表1)。12年度に続き、2年連続で前年度を上回り、12年度の0.5%増から増加幅が拡大。スマートフォンやタブレット端末の普及によりネット通販が浸透したほか、消費税増税前の駆け込み需要などが総売上高を押し上げた。
174社を取扱商品ごとに区分し、その総売上高をみると、最もシェアが高かったのが多品目を扱う「総合」で、対前年度比2.3%増の約7044億円と2年連続の増加となった(図表2)。「オフィス用品」(同5.2%増)、「飲食料品」(同3.7%増)、「家具・家庭用品」(同5.2%増)も同様にそれぞれ2年連続の増加となった。
一方、円安の影響で輸入コストが増加し、採算の悪化から製品企画自体を断念するケースが散見された「衣料・アクセサリー」では、13年度の総売上高が同2.9%減の約4182億円となった。同カテゴリーでは、ネット通販をメーンとする新規参入企業が増加したことで競争が激化している。多くの通販企業の売上が増収基調にある中、苦しい経営を余儀なくされている。
通販企業を個別にみていくと、調査対象企業の中で売上高1位となったのが、事業所向けオフィス用品販売のアスクル(東京都/岩田彰一郎社長)だ。個人向けネット通販「LOHACO(ロハコ)」事業が順調に推移し、同6.4%増となった。
2位の家電製品を主体とするジャパネットたかた(長崎県/高田旭人社長)は、地デジ移行により薄型テレビの買替需要が大きく減退した12年度から、高田明社長(当時)が進退を賭けて臨んだ13年度に白物家電を中心にエアコンや布団専用掃除機などの販売に注力し、前年度を21.6%上回る大幅増となった。
一方、「ベルメゾン」を発行する千趣会(大阪府/田邉道夫社長)が同3.1%減、「ニッセン」「スマイルランド」「テセラ」などを発行するニッセン(京都府/市場信行社長)が同12.3%減となるなど、婦人服をメーンとするカタログ通販企業の大手2社は前年度実績を下回った。
通販各社は、ネット通販への取り組みを強化し、商品のラインアップを増やすとともに、新商品の入れ替えを活発化することで顧客獲得に取り組んでいる。これを支えているのが、ネットの普及と短期間で商品を配送するための物流システムの発達などだろう。
消費者の節約志向・低価格志向は依然として根強く、アマゾン ジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長)や、仮想ショッピングモールを運営する楽天(東京都/三木谷浩史社長)、ヤフー(東京都/宮坂学社長)など価格に強みを持つネット専業企業が売上を伸ばしている。このほかにも、大手小売業、メーカーなどの通販事業への新規参入が相次いでおり、顧客獲得のための価格競争や商品開発競争がより一層熾烈化していくものと思われる。
(「ダイヤモンド・チェーンストア」2015年4/1号)