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データで見る流通
先行き厳しい調剤薬局、健康情報拠点化で生き残りへ

文=太田 将博

みずほ銀行産業調査部ライフケアチーム

 

 2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」は、調剤薬局に対して、地域に密着した健康相談・情報提供などを行い、セルフメディケーション(自己治療)を推進する健康情報拠点となるよう求めている。

 

 これは、生活者の健康寿命延伸を図るうえで、調剤薬局への役割期待を表したものであると思われるが、調剤薬局業界の先行きは決して明るいとは言えない。診療報酬(薬価)改定、消費税増税への対応、競争の激化など、当業界を取り巻く環境は厳しい。ここでは、これらの環境を踏まえて、調剤薬局が今後向かうべき方向性について考えてみたい。

 

 図表は、調剤薬局の市場規模を表す調剤医療費と処方せん枚数の推移である。

 

 医薬分業元年と呼ばれている1974年からの政府による医薬分業推進に加え、高齢化の進展による処方せん枚数の増加などにより、調剤薬局業界の市場規模は順調に拡大してきた。医薬分業率は各都道府県でばらつきはあるものの、全国平均は67%(13年度)であり、分業率が10%台であった90年代前半に比べ大きく上昇した。

 

 高齢化のさらなる進展により、処方せん枚数は増加していく見込みである。しかし、国民医療費の抑制を図るための診療報酬のマイナス改定や後発医薬品の使用拡大などが想定されるため、調剤医療費の金額は大きく増えることはなく、今後も現状の水準で推移していくものと思われる。

 

 消費税増税が調剤薬局に与える影響も大きい。調剤技術料と薬剤料を中心とした調剤薬局の売上に対しては、消費税は非課税である。しかし、仕入れには消費税が課税されるため、消費税の増税は調剤薬局の利益を圧迫する。

 

 14年4月の消費税増税時は、同時に実施された診療報酬改定により、増税分が薬価改定幅に一部考慮された。17年4月に予定されている増税時にも、増税分が一部薬価に反映されると思われるが、現状では未定である。また、仕入れ先とは消費税の増税分や薬価改定幅を考慮して価格交渉が行われるため、バイイングパワーが弱い中小零細の調剤薬局は薬価差益の減少という影響を大きく受けるだろう。

 

 また、現状の調剤薬局はオーバーストア状態にあり、ドラッグストア(DgS)やコンビニエンスストア(CVS)との競合も激しくなっている。DgSは調剤併設店舗を増やしているし、CVSは調剤薬局と提携した複合店舗を増やしている。

 

 業界環境の先行きが厳しく、また同業だけでなくDgSやCVSとの競合も激しくなるなかで、選ばれる薬局となるためには、差別化を図ることが必要となる。

 

 その方策の1つとして考えられるのが、地域の「かかりつけ薬局」になることである。かかりつけ薬局となるためには、健康相談、栄養指導、予防医療提案、健康状態測定などを幅広く行い、地域密着型の経営をしていくことが効果的である。

 

 かかりつけ薬局に向けたこれらの取り組みは、すぐに収益性に結びつくわけではない。しかし、予防段階から地域医療に携わることで、将来的には安定した処方せんの持ち込みが期待できるだろう。

 

 調剤薬局が「日本再興戦略」において求められている役割期待を果たし、かつ業界内で生き残っていくためには、まさにこの差別化を図ることが向かうべき方向性であろう。

 

 

(「チェーンストアエイジ」2015年3/1号)