前年度に引き続き、コロナ禍の影響を大きく受けた小売業の2021年度決算(21年4月~22年3月に迎えた本決算)では、主要8業態のうち5業態が増収を果たし、本業の“稼ぐ力”を示す営業利益では、5業態が減益となった。感染拡大の直接的な影響だけでなく、前年度に巣ごもり特需の恩恵を受けた業態・企業は、その反動減も受けることとなった21年度決算。各業態・各指標のランキングにはどのような変化があったのだろうか。
反動減の影響で大混戦の様相
小売各社の業績を主要業態別にまとめたのが図表❶だ。
増収・営業増益となったのはドラッグストア(DgS)とアパレル専門店の2業態で、前年度より2業態減少した。前年度、マスクや消毒用アルコールといった衛生用品や食品の需要増をとらえ、業績が好調に推移したDgS業態。2021年度は“コロナ特需”の反動減の影響を大きく受けたものの、新規出店や好調な調剤事業がカバーし、増収・増益基調を堅持している。コロナ禍の影響が直撃し、20年度に大打撃を受けたアパレル専門店は、前年度比較では増収・営業増益にはなっているものの、業績は回復の途上にあるといっていい。
増収・営業減益となったのは、食品スーパー(SM)、コンビニエンスストア(CVS)、ホームセンター(HC)の3業態だった。“巣ごもり特需”の恩恵により、20年度に売上高・利益が急伸したSM業態だが、21年度は主にその反動減の影響で減益となっている。CVSは減収・営業減益となった前年度から業績は回復傾向にあるものの、利益面は引き続き苦戦中だ。HCもSMと同様に、特需の反動減を大きく受けたものの、コロナ前の19年度業績と比較すると半数以上の企業が増収・営業増益となっており、全体的に業績は堅調であるようだ。
減収・営業増益となったのは、総合スーパー(GMS)の1業態。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置(まん防)が期中に相次いで発令された影響で、前年度に続いてGMSの業績は振るわず、営業増益を果たしてはいるものの水準は低いままだ。
減収・営業減益となったのは、百貨店と家電量販店の2業態だった。百貨店の減収は、後述する「収益認識に関する会計基準」(新収益認識基準)の影響によるところが大きく、“最悪期”だった前年度から業績は回復傾向にある。家電量販店は前年度好調の反動減により、減収・営業減益に沈んだ。
全体を見ると、業態間格差が鮮明となった前年度から一転、同じ業態の中でも反動減が直撃した企業、影響を乗り越えた企業との企業間格差が鮮明となり、大混戦の様相となっている。
セブン&アイがM&Aで営業収益ランキング首位に
続いて、上場小売業の営業収益トップ100社のランキング(図表❷)を見ていこう。
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