位置情報ビッグデータのAIによる解析により、「人流」を分析するベンチャー企業がある。クロスロケーションズだ。同社はGPSをベースに位置情報を集め、消費者の実世界での行動を可視化する。本稿では、2022年1月9日から「まん延防止等重点措置」が適用された広島県、山口県(下関)、沖縄県(那覇)※の2021年12月16日~2022年1月15日の人流を前年同時期と比較した。また、直近1か月において全国において主要9業種で人流が前年より増えたのか減ったのか、データを参考に振り返った。
《文中の主要データ比較は、2021年12月16日~2022年1月15日の1か月》
グラフデータは、業界ごとに全国2000箇所の店舗を無作為に算出し、テーマパークは全国30カ所より算出。※まん防適用の3県は、それぞれ広島駅周辺半径500m、下関駅西口周辺半径500m、沖縄県庁前駅半径500mを指定したエリアで算出した。
9業種の分類
・生活必需品(コンビニ/スーパー/ドラッグストア)
・外食(ファミリーレストラン/ファーストフード)
・趣味嗜好(デパート/テーマパーク/家電量販店/ホームセンター)
「まん防適用」の広島、山口、沖縄の12、1月の人流を前年と比較!
まずは広島県、山口県(下関)の2021年12月16日~2022年1月15日と前年同時期の人流の変化を見ていこう。
◼️広島駅周辺
◼️下関駅周辺
両エリアにおいては、この12、1月は前年と比較した場合、明らかに人流が増えている。コロナ禍で2年目を迎え、人心に「慣れ」が生じているのかもしれない。そうした「Withコロナ」の空気も漂っていた折り、1月7日午後、政府が広島・山口県に「まん防」適用決定の方針を出した。一時的に人出は3連休を前に跳ね上がる動きを見せたが、それ以降の平日は落ち着きを取り戻し、「まん防」適用中も人出に大きな変化は見られない。今回のまん防適用は、2022年1月9日から1月31日までであったが、1月19日時点、1都12県でまん防を拡大する方針が伝えられている。
次に沖縄県(那覇)の人流の動きを見ていこう。
◼️那覇県庁駅前周辺
沖縄では1日の新規感染者数が2022年1月7日には1000人を超えるなど、感染が拡大しているが、基本的には前年同時期よりも人流は増えていると言っていい。特に1月5日~1月10日には来訪者が20万人を超える日を記録するなど、全体的に人出は回復している。また、まん防適用期間中の人出は15日時点では前年と比較しても減っていないと言える。
生活必需品の人流は増えた?減った?
次に、全国9業種の人流を分析していこう。
前年データである2020年12月16日から2021年1月15日は、全国で緊急事態宣言は発令されておらず、まん防が適用された地域もなかった。一方で、今回の調査期間(21年12月16日~22年1月15日)では2022年1月9日には3県でまん防が適用され、18日には東京・神奈川など1都12県に広げる方針が固められた。直近1か月の人流は前年同時期からどう変化したのだろうか。
まずは、コンビニ、スーパー、ドラッグストアの生活必需品を販売する店舗を見ていこう。
■全国コンビニエンスストアサンプリング
コンビニ(CVS)業界はコロナ禍の影響を大きく受けた業界の一つだが、2021年12月16日から2022年1月15日にかけては前年同時期に比べて全体的に人流が増えた。オフィス街や繁華街での人出減少の影響は大きかったが、2022年に入ると一日の来訪者約80万人を超える日を記録するなど回復基調だった。しかし、全国的に感染者数が増加した2022年1月15日(土)時点では若干人出が減った(前年1月15日は金曜)。
次に、コロナ禍で売上を伸ばした企業が多く存在する、スーパーマーケット(SM)はどうであったか。
■全国スーパーマーケットサンプリング
SMも、前年に比べると人流が増加した。一日の来訪者約400万人を記録する日もあり、全国的に感染再拡大が懸念され始めた1月10日からの週においても、前年より人出は増えた。コロナ下で好調を記録するSM各社だが、人流に関しても心配ないと言えるのもしれない。
■全国ドラッグストアサンプリング
ドラッグストア(DgS)に関しても、CVS、SM業界と同じく、人流は前年より増えた。一日の来訪者が70万人を超える日もあり、全国的に感染が増え始めた15日(土)も影響を受けていない。
まとめると生活必需品を販売する、CVS、SM、DgSでの全国の人流は昨年より増えていると言えるだろう。今後の感染状況、政府方針によって人流がどう変化するか注目だ。
外食業界は人流回復!15日(土)も伸長
次に、外食業界のファミリーレストラン、ファーストフードのサンプリングを見ていこう。
■全国ファミリーレストランサンプリング
ファミリーレストランはコロナ下において時短営業や座席数を制限され、影響を受けたが、2021年10月1日以降、全国で段階的に時短要請が解除された。アルコール類の提供も緩和され、2021年12月16日から2022年1月15日までの人流は、前年同時期より大きく回復した。全国的に感染者数が増加した1月15日においても、人出は増えている。だが、今後のまん防拡大による影響がどのように変化するのか、気になるところだ。
■全国ファーストフードサンプリング
ファーストフードも、ファミリーレストラン同様、コロナの影響をダイレクトに受けた業態だが、直近1か月においては人流を取り戻しつつある。週末の1月15日(土)には前日より来訪者が増えており、緩やかな上昇傾向にある。
また、フードデリバリーが増加していることもあり、店舗への人流以外も気になるところである。
デパート、ホームセンターが好調!
最後に、趣味嗜好の要素が強い、デパート、テーマパーク、家電量販店、ホームセンターの直近1か月の人流を分析する。
■全国デパートサンプリング
デパートにおいても、直近1か月は前年と比較して、人流が増加した。特に、2022年1月5日(水)から9日(日)にかけては、来訪者数が約1千万人を超える日もあり、好調だった。10日(月)以降の人流を落ち着いているが、今後の動きを注視したい。
■全国テーマパークサンプリング
テーマパークの来訪者は、前年よりは若干の伸びだが、1月の正月明けから3連休にかけては大きく跳ねた。直近の1週間で見れば右肩上がりとなっており、感染状況が落ち着けば、イベントや連休などなどを機にさらに人流の上昇が見込めるだろう。
■全国家電店サンプリング
「巣ごもり需要」の追い風を受け、好調だった家電量販店。前年が好調だったからか、テーマパークと同じく、2022年1月8日(土)、9日(日)を除けば、来客数は前年と同程度だった。2022年度が始まる4月に向けた新生活ニーズをネットでどう取り込むのか、店舗に呼び込むのか、その戦略に注目したい。
■全国ホームセンターサンプリング
最後に、巣ごもり需要、日曜大工DIY需要に支えられているホームセンターだ。同業態では、直近1か月において前年より客足が伸びた。ホームセンターは休業要請業種から外れたという経緯もあり好調だったが、2022年に入っても来訪者は伸びていきそうだ。Withコロナ時代に突入する中、自宅でできる新たな趣味や、日曜大工、ソロキャンプなどの機会が増えるかもしれない。さらなる需要喚起に努めたい。