深刻化する「買い負け」
かつてフィリピンに長期滞在していたころ、「食品や工業製品に日本の水準を求めてはならない」と現地の人から忠告されたことがある。曰く、「ここはフィリピンだ」──。
その後帰国し、フィリピンの“緩さ”と、日本のモノやサービスの過剰ともいえるクオリティの高さとのギャップに卒倒しそうになったものだ。しかし人口減少まっしぐらの今日、いつまでこの「日本品質」を維持することができるのだろうかとも考える。
このごろ、「買い負け」なる言葉がよく聞かれるようになった。なかでも漁業では買い負けが深刻だ。今年も豊洲市場でのマグロの初競りが話題になったが、その一方、日本の各漁港では中国人バイヤーの存在感が増していることは、あまり報じられていない。
実は、全世界の魚介類の1人当たり消費量はここ50年でおよそ2倍、中国に限れば9倍に上っているという。日本の消費量はいまだトップクラスではあるが、50年前と比較すると消費量は下がっており、中国に肉薄されている状態だ。ただ、これは前述のとおり「1人当たり」の消費量であり、日本と中国の総人口には大きな開きがあることに留意されたい。
「日本品質」の追求はもはや弊害に?
このように人口や消費量が大きい国々が、バイイングパワーを増すのは理解できる。しかし、長年停滞が続くとはいえ、一応は世界第3の経済大国である日本がなぜ“買い負け”しているのかという疑問も生じる。筆者はその疑問を、さまざまな関係者にぶつけてきた。
そこで聞かされたのは、
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