克服するべき業務・作業の欠陥
チェーンストア経営の基本的な考え方に“3S主義”がある。simplification(単純化)とstandardization(標準化)とspecialization(徹底化)である。あらゆるシステムはこの原則にしたがって構築されるのだ。
ところが日本の流通業の場合、この逆が一般的である。業務・作業は幹部の思い付きで、かつ「他社に倣って」や「お客さまの要望で」など、時間経過とともに追加に追加を重ね、複雑化している。
加えて実行方法に“決まり”がないから、実行する担当者ごとに完成度が異なるのだ。製造業なら誰が実行しようと、出来上がった製品の品質は同じになるのだが、流通業ではそうはいかない。
また、1人の担当者に業務・作業の複数テーマが同時に包括委任される。したがってその達成方法や時間のかけ方は人によってまちまちになる。“決まり”がないから徹底できないのである。
そのため例外と逸脱が頻発する。やり直しや応急処置業務にさらなる時間を取られることになる。優先順位が低いテーマなら不適切な状態は放置され、チェーンなのに商品もサービスも店ごとに異なる結果になる。そうならないために、店長以下社員にもパートにも工夫や努力やガンバリが求められるが、業務・作業内容が複雑すぎて遂行は困難だ。
労働人口が減少すると流通業から人手不足になるのはそのためである。製造業の業務・作業は難易度別に分けられ、それぞれの業務は単純化されている。そのうえでその実行方法は最良の方法が突き詰められて標準化している。だから実行する人はその都度工夫したり頑張ったりする必要はないのだ。教わったとおりの手順で決められた道具を使うと手足は自然に動く。つまり誰がやっても結果は同じになり、徹底できるのである。
ディスカウンティングフォーマットの店舗オペレーションはローコストで実行されねばならない。そうでないとディスカウンティング価格が維持できないからである。もちろんバーティカルマーチャンダイジングシステム構築によって安売りしても適切な粗利益高を確保できるが、オペレーションコストも下げねば競争に勝てない。そのために業務・作業を3S主義に基づいて構築すべきなのである。
まずは担当者への包括委任を止めて
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。