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“普通”のチェーンの方が、個店経営の教育効果が期待できる理由

チェーン理論において重視された「訓練」

 店舗ピックアップを含めた無人店舗、あるいは無店舗、ネット販売をリードするのは、1つはアマゾンのような既存流通業とはまったく別次元にある新企業、もう1つは既存流通業の転進である。その代表例が米ウォルマート(Walmart)だ。ウォルマートこそ流通業チェーンの中で、最も多数の商圏を獲得し「大企業化」に成功した流通業だからである。

 日本における転進したチェーンの主力は、ビッグストアのイオン(千葉県)とセブン&アイ・ホールディングス(東京都)グループのイトーヨーカ堂(東京都)だ。それは、両社が日本独自の「ビッグストア」を開拓し、ウォルマートと同様に規模でトップに立つことを優先する戦略を採用して、同業との競争に勝ち抜いたからである。

「教育」と「訓練」はどう異なるのか。ほとんどのチェーンにおいて、訓練は教育と誤解されている。(i-stock/bee32)

 だが奇しくも、そのイトーヨーカ堂から派生するかたちで出発した「セブン-イレブン」の「個店経営」が、ネットに取って代わられることのない店舗独自の役割があることを証明した。それにより、「訓練」よりももっと重要な要因として、真の「教育」が必要であることを示唆することになった。

 では、「教育」と「訓練」はどう異なるのか。ほとんどのチェーンにおいて、訓練は教育と誤解されている。それはチェーンがこれまで行った教育のほぼすべてが、「チェーン理論」を理解し、暗記するための訓練だったからである。

 教育とは、原理原則を「覚える・暗記する」ことではなく、むしろ「疑う・考える」ことである。個店経営に必須の「個店マネジメント」がよい例だ。個店マネジメントとは、個店での商品と、お客の行動から「何が、いつ、なぜ、いくつ売れたか。そして次に何がいくつ売れるか。それはなぜか」を五感で感じ、自分で考え、疑問を持ち、仮説を立て、検証し、提案することである。それは「覚える」「繰り返す」「暗記する」といった訓練では、不可能である。「覚える」「繰り返す」「暗記する」ことは時間をかけて努力すればできる。訓練の本質は、「努力主義」なのである。

 一方、個店マネジメントは努力ではなく、自分で感じて、考えて、疑問を持つ力を身につけなければならない。訓練の目標は、個人の能力の画一化だが、教育は個人一人ひとりの能力の育成を目標としている。チェーン理論でも「自己育成」という言葉が多用されているが、それはチェーン理論を暗記・実践するのも、結局のところ個人だからであり、それを身につけた個人は、実際の行動では上司の命令を集団で忠実に実行することしかできなかった。「集合教育」が教育と見なされ、個人が本当に自分で考える、あるいは疑うことは、むしろ禁止されていたのである。

「教育」なくして個店経営は実行不可能!

 敢然とそれを疑ったのがセブン-イレブンだ。なぜなら

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