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地域No.1でも油断は禁物! 売上1000億円規模のローカルチェーンが勝ち残るための戦略

人口減少エリアで勝ち残るスーパーマーケットの条件について考察する本連載。第2回では、売上高1000億円前後のスーパーマーケット企業が今後とるべき戦略について考えてみましょう。

narin_nonthamand/iStock

「おいしさ」のリーダーになる!

 売上規模1000億円前後のスーパーマーケット企業は、地方エリアにおいては圧倒的な力を持っているチェーンと言えます。大都市圏における売上高2000~3000億円クラスに匹敵する存在感があるところがほとんどかと思います。

 この規模のチェーンは、今後3年間はそのままでも現在のポジションを確保することができるでしょう。なぜなら、そのエリアでNo.1のシェアと基礎体力を持っているからです。

 ただし、安心はできません。近頃は、ドラッグストアのドミナント大量出店、大手ディスカウントストアの進出のほか、イオン(千葉県)やセブン&アイ・ホールディングス(東京都)グループをはじめとした大手流通グループもローカルエリアには存在しており、大きな脅威となっています。「これだけの規模があれば大丈夫」「自店の近くに競合店が新規出店しても、まだ負けない」と油断した瞬間からシェアを奪われていくことでしょう。

 では、そうした脅威に対応するには、どうしたらよいのでしょうか。エリア内ではNo.1のシェア(力)を持っている企業ですので、自社の強みは十分に理解されていることかと思います。重要なのは、その強みをいかにブラッシュアップしていくかという点です。

 ある場面においては、そのエリアにおけるプライスリーダーとなることもできます。それにとどまることなく、品揃えや品質、安全安心、さらには「おいしさ」のリーダーになることも可能でしょう(当然、すでにできている企業も多く存在します)。

 「おいしさ」のリーダーになる上で重要なのは、「おいしさ」のお客さま満足度をどこまで上げられるかという点です。この満足度によって、お店はお客さまに①「信用されるお店(過去の実績)」、②「信頼されるお店(未来の行動を信じる)」、③「愛されるお店(人がお店に人を呼ぶ)」へと変化していきます。当然、この「おいしい」とは、総菜部門のことだけではなく、「商品が新鮮」「テレビCM商品の導入が早い」など全部門について言えることです。店舗や部門の責任者であれば、やるべきことは明確にはわかっているはずですので、あとは実行あるのみです。

直接仕入れの強化が重要に?

 人材の配置(=人事評価)も重要になります。売上高1000億円前後の規模のチェーンであれば、従業員教育も一定以上の水準で行われていることでしょう。それらの「人財」をどう育てるのか。ゼネラリストなのか、プロフェッショナルなのか。セクションやポジションによっても変わります。また、それらの人財を適材適所に配置できるかどうかでもモチベーションは大きく変わってきます。適切な配置がなされれば、従業員は最高の仕事をしてくれることでしょう。

 カリスマ経営者、日本電産代表取締役会長の永守重信氏の「人の能力の差は有っても5倍だ。ただ意識の差は100倍だ」という言葉があります。筆者もその通りだと思います。従業員の意識を変えることができれば、怖いものはありません。

 上司と部下の人間関係(信用・信頼)づくりも重要です。人間は「感情」のある動物です。これを頭の中に入れて行動するのがよいでしょう。

 実務的なところで言うと、市場仕入れ・問屋仕入れからの脱却をめざすべきです。自社による直接仕入高をいかに上げていくかが今後重要になります。

 世界的な経済混乱に直面し、商品や原料の調達が難しくなるなか、直接仕入れによって競合他社よりも先に商品を確保することは利益確保にもつながります。仕入れる商品が地元産の商品であれば、よりよいでしょう。地域の生産者は、商品部のバイヤーも知らない情報やネットワークを持っています。それを使わない手はありません。「利は元にあり」です。

迫る物流の「2024年問題」

 最近のトピックスで言えば、「2024年問題」への対応も重要になります。働き方改革関連法の適用に伴い、物流・運送業界で懸念されるさまざまな問題です。労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法、労働契約法・パートタイム労働法など関連する法律は多く、働く人が安心かつ安定して働けるように労働環境を整備し、多様で柔軟な働き方ができるようにするための法案です。小売業も無関係ではありません。

 ポイントとなるのは、ドライバーの時間外労働の上限が規制され、年間の時間外労働は960時間までとなるという点です。1日当たりにすると2.6時間になります。細かな内容などは関連法案を確認してみて下さい。

 小売業は自社でセンター運営・配送を行っている場合、この法律が適用されます。現在は、「まだ先の問題だから……」と思っている方も多いでしょう。ですが、すでに九州では、イオン九州(福岡県)とトライアルカンパニー(福岡県)のほか地場小売が参画した共配物流プロジェクトが始動しています。北海道では、コンビニ大手3チェ―ンが同様に共配物流を始めています。

 物流に関する問題は、エリアNo.1の企業が率先して対応しなければいけません。まだ着手していない場合は、すぐにでも検討委員会などを立ち上げなければ間に合いません。そうした取り組みは、排気ガスや地球温暖化といったSDGsの取り組みにもつながっていくことでしょう。

 最後に、売上高は右肩上がりだが、利益(利益率)が下がってきた場合は、黄色信号です。業績が増収減益になった場合は、とくに注意する必要があります。なぜ減益になったのか。その理由が明確であれば問題はありませんが、そうでない場合は原因追究をすぐに行ってください。経営幹部は常に問題意識を持ち、部下に正確かつ明確な方向性を示すことが重要です。

 次回は売上高500億円前後のスーパーマーケットの勝ち残り戦略について考えていきます。