熊本県を中心に九州北部で総菜専門店140店舗以上を展開するヒライ(熊本県/平井浩一郎社長)は、国内でも希有な「弁当・総菜のSPA(製造小売業)」を実現している企業だ。グループ9工場を駆使して創出するヒライの圧倒的な強みを解説する。
中規模3工場に生産を分散させる理由
ヒライでは総菜専門店ならではのおいしさと出来立てを徹底的に追求する。自社の製造工場に中間工程の加工作業を集約し、材料をキット化して各店舗に供給する一方、店舗では「焼く」「揚げる」といった簡単な最終工程のみを行うことで、店内作業を省力化・効率化しながら、温かみのある出来立てのおいしい商品を消費者に提供するというオペレーションモデルになっている。
ヒライは、本社に併設される熊本工場(熊本県熊本市)、福岡工場(福岡県筑後市)、そして最新鋭の八代工場(熊本県八代市)の3カ所の製造工場を運営する。
ヒライの平井浩一郎社長は、その狙いについて「BCP(事業継続計画)上のリスクヘッジの観点から、大規模な工場に生産体制を集約して効率化を追求するよりも、事業エリア内に中規模の工場を複数配置し、多拠点化するほうが望ましい」と語る。2016年4月の熊本地震や20年7月の集中豪雨など、近年、ヒライの事業エリアである九州北部では自然災害が相次いでおり、災害リスクへの備えはますます重要になっている。また、エリアごとに製造工場を配置し、各店舗への配送距離を短縮することで、配送に要する時間やコストを軽減できるのも利点だ。
ヒライの3カ所の製造工場では、各エリア内の60~70店舗に向けて主力商品である弁当・総菜・おにぎりを製造するとともに、特定の工程やカテゴリーを専門化し、役割を分担し合うことで、全体の効率化を図っている。
最大規模の熊本工場では、トンカツ用や焼き肉用のスライス加工、唐揚げ用鶏肉の下処理やたれ漬けなど、総菜の原料となる肉の加工を担うほか、コロッケやメンチカツなど、フライ類のパン粉付の専用ラインを設置。また、「ほうれん草入りだし巻き」といったオリジナルメニューを含め、さまざまな卵焼き商品の製造も一括して担っている。一方、福岡工場では、自社で独自に開発したソース、スープ、たれ、カレールウをまとめて製造している。
21年5月には、これら2カ所の製造工場に加え、八代工場の稼働を開始した。ライン生産方式を完全に廃止し、
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。