食品卸大手の日本アクセス(東京都/佐々木淳一社長)の2021年3月期決算は減収減益だった。コロナ禍で業績を伸ばしている食品スーパー(SM)やドラッグストア(DgS)向けの売上が好調だった一方、コンビニエンスストア(CVS)や飲食店向けの需要減が業績に大きく影響した。22年3月期では成長事業の拡大やCVSの立て直し、情報卸としての取り組みなどに注力する。
低温商品が好調
日本アクセスの21年3月期決算は、売上高が対前期比0.3%減の2兆1472億円、営業利益が同16.0%減の174億円、経常利益が同16.4%減の178億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同30.9%減の97億円だった。飲食店のほか、売上高構成比では2番目に比率が高いCVS向けの売上が大きく減少したことが業績に響いた。
市場分野別の売上高では、「市販用(一般小売)」が同3.7%増の1兆6121億円と伸びた一方、「中食」は同10.0%減の3079億円、「外食」は同13.8%減の1159億円、「ロジスティクス事業」は同5.1%減の1956億円だった。
業態別売上高では、地方SMなどを含む「リージョナル・チェーン」が同7.4%増の7399億円、「ナショナル・チェーングループ」が同9.8%増の3452億円、「DgS」が同11.8%増の1421億円、「CVS」が同9.6%減の5458億円、「外食・デリカメーカー」が同12.9%減の2972億円、「卸売業」が同6.1%減の513億円、「その他」が同3.3%増の257億円だった。
温度帯別の売上高では、「ドライ」が同2.3%減の7762億円、「チルド」が同2.6%増の7271億円、「フローズン」が同1.0%増の4430億円だった。カテゴリー別では、「洋日配・乳製品」が同3.7%増、「和日配」が同10.5%増、「市販用冷凍食品」が同11.8%増、「アイスクリーム」が同6.8%増、「乾物乾麺・他加工食品」が同7.8%増、「調味料」が同10.6%増と、コロナ禍で需要が高まった商材が好調に推移した。その一方、「清涼飲料・嗜好飲料」は同4.4%減、「菓子」は同6.2%減、「原料」は同15.1%減、「酒類」は同1.1%減だった。
総菜では外食・中食・内食で連携
日本アクセスは、決算説明会で21年度の経営計画・事業戦略も発表した。新型コロナウイルス感染拡大による先行き不透明な経済情勢、消費者の生活様式や購買行動の変化などを踏まえ、業務改革の断行と事業モデルの変革を推進する。コロナ禍で顕在化した課題を先送りにせず、解決を最優先する1年として、単年度での経営計画を策定した。「①成長事業・成長領域の拡大」「②事業モデルの変革」「③業務改革とDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」「④成長、変革を促進する人財・風土改革」「⑤サステナブル経営の推進」の5つの基本方針を掲げ、なかでも①②③に力を入れる。
「①成長事業・成長領域の拡大」では、かねてより志向している「フルライン卸」としての取り組みを強化。強みである低温分野を拡大し競争優位を確保するほか、ドライでは課題だった菓子・酒類の売上伸長を図る。商品開発では、自社ブランドや冷凍ミールキット、生鮮、総菜を強化する。総菜では21年4月に新設した「デリカ管掌」を中心に外食・中食・内食の連携を図りながら事業拡大を行う。
ファミリーマートの店舗で実証実験
「②事業モデルの変革」では、コロナ禍で業績が落ち込んでいるCVSの立て直しを最大の課題に位置付ける。同じ伊藤忠商事(大阪府/岡藤正広会長CEO)傘下のファミリーマート(東京都/細見研介社長)との連携を強化し、「CVS物流改革推進部」では同社からの出向社員を7人受け入れ、受発注の効率化などサプライチェーン全体の最適化で協業する。また、ファミリーマートの日商アップのため、日本アクセス傘下のファミリーマートのメガフランチャイジー企業が運営する店舗では商品提案の実験などを実施する。外食については、取引先の業態転換などの支援に力を入れるほか、飲食店向け発注システムの開発や、ロスが出にくく使いやすい商品の開発にも取り組む。
「③業務改革とDXの推進」では、デジタル販促やデータ連携などで小売業を支援する「情報卸」としての取り組みを強化する。すでに小売業5社との実証実験を終え、21年度は本格展開を開始。合計10社への導入をめざす。「すでに導入した企業のなかには、月間売上が1億円以上伸びているという効果も出ている」と佐々木社長は話す。また、小売業だけでなくメーカー向けサービスの開発も21年度から開始する。
日本アクセスはこのような取り組みにより、21年度では売上高2兆1800億円(同1.5%増)、経常利益218億円(同22.1%増)、経常利益率1.0%(同0.2ポイント増)、親会社株主に帰属する当期純利益147億円(同50.6%増)をめざす。