イタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」を展開するサイゼリヤ(埼玉県/堀埜一成社長)は4月8日、東京都練馬区に「サイゼリヤ地下鉄赤塚店」をオープンした。同店は店舗面積が約120㎡という小型の新業態店舗だ。同社が確立をめざす小型店モデルの店づくりと、開発のねらいをレポートする。
「ローソン」の跡地に出店
「サイゼリヤ地下鉄赤塚店」が開業したのは、東京地下鉄有楽町線・副都心線「地下鉄赤塚」駅から地上に出てすぐの場所。コンビニエンスストアのローソン(東京都)の退店跡地に居抜き出店している。
新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大で外食企業は業績が落ち込んでおり、それはサイゼリヤも同様だ。そんななかでも堀埜一成社長は2020年秋に実施した「ダイヤモンド・チェーンストア」のインタビューにおいて「コロナ禍でもある程度の出店は続ける。契約満了で閉店する店もあるため、店舗数の減少による固定比率の上昇を防ぐためだ」と述べている。
そこでサイゼリヤが開発を進めるのが、出店コストを従来の6割ほどに抑えながらも収益確保を可能にする小型店モデルの開発だ。この地下鉄赤塚店はその1号店にあたる。
専用冷凍ケースを設置し
業務用食材を販売!
地下鉄赤塚店の店舗面積は約120㎡と同社標準店の4割程度しかない。このように売場面積に限りがあるなかでも収益が得られるように、サイゼリヤはさまざまな工夫を施している。
店内にある大きな
冷凍ケースの正体は…
まず、顧客回転率を高められるように、席数44席のうち8席は1人用のカウンター席にして、短時間でサッと済ませる夕食「サパー」ができる場として提案する。
次に、1人当たりの売上を高められるように、サイゼリヤで提供するメニューを、冷凍・業務用食材として販売する。出入口入ってすぐの目立つ場所に専用の冷凍ケースを設置し、「業務用辛みチキン」(1.5㎏・約40ピース2200円)「エスカルゴ」(12個入750円)「ティラミス クラシコファミリーサイズ」(6人分1760円:すべて税込)など7種類を訴求。来店者に自宅でもサイゼリヤの味が楽しめる商品を購入してもらうことで客単価を高める。
ピーク時でも人員数は3人!
秘密はキッチンにあり
最後にとくに注目したいのが、地下鉄赤塚店はピーク時でも従業員3人体制で店舗運営ができるようにしている点である。オープンキッチンを採用することで、調理場から店内の状況がよく見渡せるようにするとともに、調理場と店内間の移動がスムーズにできるようにした。また調理場の設備を改良し、ピーク時でも短時間でのツーオーダー対応を可能にしている。
これらの取り組みにより地下鉄赤塚店は、サイゼリヤの標準店と同様水準の年商をめざす。挑戦的な数字目標だが、かつて南東約150mにサイゼリヤ店舗があり同店では平均以上の売上を稼いでいたこともあって需要はあると見ている。
この小型店モデル確立の先にサイゼリヤが見据えるのは、未開拓の14県への進出や、都市部へのさらなる出店だ。前出のインタビューで堀埜社長は「とくにコロナ禍では都市部で撤退する小売店や飲食店が増えることが想定され、好機だとみている」と話す。
コロナ禍で業績が振るわない外食だが、新たなフォーマット開発やテイクアウト商品の強化を一気に進めており、食ニーズの争奪競争はかたちを変えてさらに激化していくと言えそうだ。
「サイゼリヤ地下鉄赤塚店」概要
所在地 :東京都練馬区田柄2-51-16
営業時間 :11:00~22:00(通常)
店舗面積 :120㎡
席数 :44席