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フードデリバリーの枠を超える!ウーバーイーツがスーパー、コンビニの配送をする理由を事業責任者に聞く

配達員の姿を街で見かけない日はないほどになった「ウーバーイーツ(Uber Eats)」が日本に上陸したのは今から約5年前、2016年9月のことだ。渋谷、恵比寿、六本木など東京の一部地域からスタートしたサービスは現在、35都道府県まで拡大、加盟店は9万5000店舗(21年4月現在)まで増加した。フードデリバリーサービスの代名詞といえるまでに成長したウーバーイーツは、2019年8月からローソンと提携し一部の店頭商品の配送を開始、現在はスーパーマーケット(SM)各社などにもその対象を広げている。そのねらいについて、Uber Eats Japan ニューバーティカル事業部門ゼネラルマネージャーのユリア・ブロヴキナ氏に話を聞いた。

なぜ今グロサリー配送なのか

 ウーバーイーツがグロサリー配送に参入する大きな後押しとなったのは、ウーバーイーツを利用したことがあるユーザーに対して2020年に実施した調査の結果だった。「フード(飲食店メニュー)以外でどういうものを届けて欲しいか?」という質問への回答で最も多かったのはSMなどで販売されているグロサリーを含む食品や雑貨で、他にも生花や薬、ミールキットなど想定以上のバリエーションの回答が寄せられた。また、ウーバーイーツに対するイメージで最も多かったのは“スピーディーさ”で、「社会の持つデリバリーへの多種多様なニーズと、ウーバーイーツの持つスピード感を掛け合わせることで、十分サービスとして成立すると判断した」(ブロヴキナ氏)。

 冒頭で述べた2019年8月から行なっていたローソン(東京都/竹増貞信社長)との取り組みでは当初、社内からも「すぐ近所にあるコンビニエンスストアの商品を、配送料を支払ってまで届けて欲しいという人が本当にいるのか」という疑問の声があったという。しかし実際には、想像をはるかに上回る利用があり、現在では全国のローソン1500店舗に拡大して配送を実施している。決してすぐ近くの店舗で簡単に手に入るものだからといって配送需要が低いわけではないのだ。このことからSMの配送にも十分な需要があるという確信を得ることができたという。

 現在、提供地域に差はあるものの、SMではマックスバリュ東海(静岡県/神尾啓治社長)、光洋(大阪府/平田炎社長)、西友(東京都/大久保恒夫社長)などをはじめ、成城石井(神奈川県/原昭彦社長)やビオセボン(東京都/岡田尚也社長)など、高質・オーガニックなど専門性の高いSMの配送も実施している。これらのパートナー企業の開拓には、ウーバーイーツ側からの働きかけによるものと、企業側からの申し出で実現したものが半々で、ここでも改めてグロサリー配送のニーズの高さを実感したという。

ネットスーパーとの差別化

 一方、コロナ禍で高まるEC需要を受け、この一年でSM各社の間では、自社ネットスーパーの導入が一気に拡大した。そんな中で、ウーバーイーツのグロサリー配送が持つ優位性は何だろうか。これについて、ブロヴキナ氏は「ネットスーパーなどとは利用シーンが異なると考えている」と語る。

 つまりはこういうことだ。SM各社が提供するネットスーパーは、あらかじめ献立などの計画を立て、まとめて注文しまとめて届けてもらうといった使い方が主流だ。その分、商品が届くのは当日夕方や翌日など、ある程度の時間がかかる傾向にある。

 一方、ウーバーイーツのグロサリー配送が真価を発揮するのは、「あると思っていた食材を実は切らしていたことに夕食作りの直前で気がついた」「もう料理を始めているのに、買い忘れに気がついた」など、今この瞬間必要なものがある、という場面だ。こういう時こそ、「ウーバーイーツの持つ強靭な配送ネットワークが最も生かされる」(ブロヴキナ氏)。これまで培ってきた、約30分以内の配送を可能にする配送マッチングシステムや、10万人の配達パートナーを駆使することで、ネットスーパーでは満たしにくい需要を満たす、他にないサービスとしての立ち位置を獲得することが可能になる。もちろん、まとめて注文する通常のネットスーパーのような使い方も可能で、さらに“すぐ届く”という付加価値を提供することもできる。スピード感を武器にしたネットスーパーとの差別化で、グロサリー配送の利用率は確実に増加傾向にあるという。

家電、ドラッグストアなど新たな挑戦も

Uber Eats Japan ニューバーティカル事業部門ゼネラルマネージャー ユリア・ブロヴキナ氏

 今後の方向性について、SMやCVS配送など、フードデリバリー以外の新規領域事業を統括するブロヴキナ氏はこう語る。「顧客の要求に応え続けるオンデマンドデリバリーを、より幅広いラインアップと地域で提供することで、ウーバーイーツの日本での存在感をさらに強固なものにしていきたい」。

 3月30日からは、家電量販店大手のエディオン(大阪府/久保允誉会長兼社長)の商品を配送する実証実験を東京・大阪の3店舗で開始した。家電量販店がウーバーイーツのパートナー企業となるのは国内初のこととなる。ブロヴキナ氏は他にも、ドラッグストアとの提携や、それによる医薬品の配送にも意欲を示す。「ウーバーイーツが積み上げてきたシステムでなければ叶えられないデリバリーニーズがある。既存のデリバリーの概念に囚われず、新たな挑戦を続けていきたい」と締め括った。