国分グループ本社(東京都/國分晃社長)は2020年12月期の決算発表を行った。新型コロナウイルスの影響で、飲食店やコンビニエンスストア(CVS)などへの売上が大きく落ち込んだものの、運営体制の見直しなどにより損益分岐点を下げることに成功、減収増益となった。決算説明会では第11次長期経営計画についても発表された。「共創圏の確立」のため、バリューチェーン全域で従来の枠組みを超えた連携を進めることをめざす。
損益分岐点を下げ利益確保に成功
国分グループ本社の20年12月期決算は、売上高1兆8479億円(対前期比2.3%減)、営業利益80億円(同7.0%増)、経常利益102億円(同1.5%増)、当期純利益57億円(同82.7%増)の減収増益だった。
商品の部門別売上高では、「食品」全体が同0.8%増の1兆1849億円。内訳では「加工食品」が同0.9%減、「冷凍・チルド」が同5.4%増、「菓子」が同8.9%減だった。「酒類」全体では同7.2%減の5736億円。内訳では「酒類」が同3.0%減、「麦酒」が同20.3%減、「ビアテイスト(麦酒除く)」が同0.6%増だった。「その他」は同8.6%減の893億円だった。
業態別売上高では、「SM」(食品スーパー)が同4.9%増、「ドラッグストア」が同10.1%増など好調だった一方、コロナ禍での在宅勤務の普及や営業自粛要請などで影響を受けた業態は大きく落ち込み、「CVS」が同11.7%減、「一般・業務用酒販店」が同36.8%減、「外食ユーザー」が同10.6%減だった。
減収に関しては、新型コロナウイルスの影響による飲食店などに対する業務用酒類の落ち込みなどが大きく影響した。しかし、業態別で売上が急減したチャネルで運営体制の見直しなどによって損益分岐点を下げることに成功。売上の落ち込みをカバーできたことが奏功し、増益につながった。
「共創圏の確立」で新たな食の価値・事業創造をめざす
決算説明会では、21年度から始まる第11次長期経営計画についても発表された。第11次長期経営計画のビジョンタイトルは「『食のマーケティングカンパニー』の進化~共創圏の確立~」。「食のマーケティングカンパニー」として、食に関わるあらゆる事業者および生活者の真のニーズを主体的に捉え、社内外の人々と融合した「共創圏」を構築・発展させ、食の価値創造No.1企業となることをめざす。
国分グループ本社がいう「共創圏」とは、川上から川下までのバリューチェーン全域で、同社が仕入先・販売先のみでなく、生産者、物流会社などの事業者や行政、生活者と従来の取引・取り組みの枠を超えて連携することで、新たな食の価値・事業創造をめざすネットワークのことだ(上図参照)。第1階層の本社やエリアカンパニー・カテゴリーカンパニー、第2階層のグループ各社に加え、第3階層・第4階層の構築・拡大をめざす。なお、共創圏パートナーの定義づけなどは出資の有無や出資比率、取り組み内容などを考慮してこれから行う予定で、5年間で第3階層での売上を1兆円、第4階層までの企業数を100社増やしたい考えだ。
「コト売り」事業を拡大・発展
共創圏の確立のために国分グループ本社が注力する事業の1つが「コト売り」事業だ。従来の卸としての「モノ売り」事業に加え、物流事業やシステム外販事業、マーケティング事業などの「コト売り」事業を拡大・発展させ、「モノ+コト」による事業の“二輪化”を実現する。第11次長期経営計画では、「コト売り」事業の経常利益比率30~50%をめざす。
物流事業においては、すでにいくつかの取り組みが発表されている。20年11月には、マレーシアで物流事業を展開する国分フードロジスティクスマレーシアが、4温度帯に対応した新たな物流センターを開設。国内では、21年7月に低温卸売事業を再編する。同事業を展開する国分フードクリエイト(東京都)の東北、関信越、近畿・中四国エリアの事業を、国分東北(宮城県)、国分関信越(栃木県)、国分西日本(大阪府)の各エリアカンパニーに統合し、「常温と低温の融合」をめざす。国分フードクリエイトは首都圏の低温卸売事業に注力することとなる。
また、「コト売り」事業としては、スタートアップ企業のmyProduct(東京都)と協業して地方創生の支援にも取り組んでいる。同社が運営する食の産業観光プラットフォーム「CRAFTRIP(クラフトリップ)」と、国分グループ本社が運営するクラウドファウンディングサイト「食と酒の未来勘所」で、宮城県の南三陸町の食品や体験プランを販売する実証実験を21年1~4月に行う。
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第11次長期経営計画の初年度となる21年12月期では、国分グループ本社が20年9月に独自に作成した「SDGs(持続可能な開発目標)ステートメント」の実現や、グループ全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進などに注力する。
國分勘兵衛会長兼CEOは、「長計策定の時期がコロナ禍と重なったことは、計画を立てるうえでグループにとって大きなアドバンテージとなった。コロナ禍で変化する世の中に対応した計画を策定できた」と語った。コロナ禍を経て、国分グループ本社はこれまで以上に単なる卸売企業にとどまらない取り組みに注力していくこととなる。