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新型店舗のターゲットは、生活の楽しみ方を知っている女性=大創産業 矢野博丈 社長

ここ数年、新たな店づくりによって、変貌を遂げつつある大創産業。来店客の評判も上々で、改装によって大きく売上高を伸ばす店が増えている。同社は今後、どのような成長戦略を描こうとしているのか。矢野博丈社長に聞いた。

女性にアピールする店づくり

──新型店舗が増え、「ザ・ダイソー」のイメージが急速に変化しつつあります。

大創産業 矢野博丈社長

矢野 今から4年ほど前、同業の100円ショップを見て、当社は商品や売場づくりなど、すべての面で負けていると感じました。このままではいけないと、商品のテイストを大きく変え、見せ方も工夫し始めました。最近は、什器も商品を効果的に陳列できるものが増えています。若い社員たちが頑張ってくれているおかげです。

 現在は、新しいスタイルの店を出店しながら、既存店のリニューアルを年間500店のペースで進めている最中です。方向転換が数年、遅れていたら、会社はダメになっていたかも知れません。本当に危ないところでした。

──商品開発では、女性のバイヤーも活躍しているようですね。

矢野 もちろん男性社員もいい仕事をしてくれているのですが、商品の種類によっては女性社員の感覚を反映させるようにしています。デザインのほか、鮮やかなカラーリングの商品は評判も上々で、よく売れています。反対に、色が暗い商品はあまり売れなくなっています。

──ターゲットを女性寄りに設定することで、需要を喚起しようとしているのですね。

矢野 女性は生活の楽しみ方を知っています。買物も躊躇することなく、気に入ったものをどんどんカゴに入れていくのが女性の特徴です。家庭でも財布のひもを握っているのは女性の場合が多く、その意味でも、女性にアピールするような品揃えや売場を展開したほうがいいと思っています。

 それに対して、男性は商品を1~2個買うのでも悩みますよね。居酒屋でお金を払うのは何とも思わないのですが。かつて、男性をターゲットにしたホームセンターの小型店のような業態をめざしたことがあります。しかしベーシックな道具類は、購入いただくと10年、20年は買い替えない。その意味では、流行らなくなったり、気に入らなかったりすれば新しいものを購入する女性相手のビジネスのほうが面白いかも知れません。

 

“進化”こそ成長のカギ

──事業の長期展望について教えてください。

矢野 人口が増え、マーケットが拡大している場合には長期展望は有効かもしれません。かつては500坪の店舗を出店するよりも、1000坪の店舗を出店する経営者のほうが勝った時代がありました。周りからは「あの人は先を見る目がある」とか「戦略家だ」と言われたものです。しかし先を見る目なんて、もともと人間には備わっていない。現在の不透明な時代にあっては、ただ自分の足元をしっかり見つめながら、少しでもよくしていく努力をするしかないと思います。

──100円ショップの市場はどこまで伸びる可能性があると考えていますか。

矢野 それは、われわれが決められることではありません。ただ「ザ・ダイソー」が、どれぐらい進化できるかによって伸びる可能性は違ってくると思います。コンビニエンスストア業界を見ると、オーバーストアにあると言われながらも、今も着実に業績を残し続けている。常に新たな要素を取り入れ、チャレンジすることでマーケットを広げている好事例です。

──新型店舗の出店・改装のほか、さらにPOSシステム導入、物流センターの整備など、同時並行で大きなプロジェクトが進んでいます。

矢野 当社だけではなく、現在はすべての企業が大きな転換期にさしかかっていると言えるでしょう。お客さまの期待、要求が小さくなることはないし、それは将来についても同じことです。今が転換期だと気づかず、何らかの対策をとらなければ、次の時代への電車に乗り遅れることになるかも知れません。