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コロナで失速したGDOが“コロナに強いゴルフ”の恩恵を享受するために必要な逆説的戦略とは

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)の2020年12月期(20年1~12月)連結決算は、売上高が336億9000万円(対前期比1.7%減)、営業利益が8億3800万円(同14.3%減)、純利益は2億6100万円(同27.1%減)となった。新型コロナウイルス感染症(コロナ)拡大の影響を受け失速した格好だが、ゴルフのプレー需要は復調傾向にあり、2021年は大幅な増益を見通す。今期は“コロナに強いゴルフ”の恩恵を最大限に享受できるのか、その真価が問われる1年となる。

ゴルフはコロナに強いにもかかわらず、コロナに振り回されたGDO。21年度、捲土重来のために必要なこととは

コロナに翻弄された1年

 GDOにとって、2020年は新型コロナに良くも悪くも翻弄された1年だった。

 幸先の良いスタートを切った第1四半期だが、新型コロナが拡大し4月に緊急事態宣言が発令されるとゴルフグッズ店やゴルフ場の閉鎖が相次ぎ、第2四半期は大きく低迷。それでも夏場を迎え、ゴルフが三密を避けやすい野外スポーツとして再認識されると徐々に売上を回復。第4四半期には、前年同期比で1割以上の増益を達成するまでに復調した。

 2020年は拡大しつつあったゴルフ人口を取り込み、業績を大きく伸ばす1年となるハズだった。ところが新型コロナが発生し、想定は白紙になる。まさかの事態に、同社も2020年を「特殊な1年」と表現するしかなかった。

大復活への4つの根拠

 それだけに2021年は、捲土重来を期する1年となる。2021年の通期の連結業績予想は、売上高378億円(前年比12.2%増)、営業利益11億円(同31.1%増)、純利益5億4000万円(同20.1%増)を見込む。新型コロナはいまだ終息へ向け不透明感が拭いきれない状況にあるものの、数字には2020年の低迷を払拭する強気の姿勢が反映されている。

 もちろん根拠はある。1つ目が、第4四半期に鮮明になった回復の兆しだ。2020年上期は、緊急事態宣言によるゴルフ場閉鎖等がボトルネックとなり、顕在ニーズを取りこぼしたが、下期にかけ、急回復。この流れに加え、2021年は十分な対策やワクチン接種等による新型コロナ終息の道筋もみえつつあり、顕在化した新規のゴルフ人口のさらなる増加と浸透が期待できる。

“コロナに強いゴルフ”を裏付ける2つのデータ

vm/istock

 コロナ禍で再認識されたゴルフ人気を裏付けるデータがあることが2つ目の根拠だ。経済産業省が公表した「特定サービス産業動態統計調査の統計」によると、7月のゴルフ場の利用者数は前年同月比で約1割増加。以降は前年以上の水準をキープしている。

 同社が昨年4月から10月にかけて会員1095人を対象に行なったアンケートでも、こうした動きと相関する結果がでている。

 「2020年4月以降にゴルフを始めた、または再開したきっかけに新型コロナウイルスの流行は影響したか」の質問に対し、「ゴルフは野外スポーツなので感染リスクが低いと思った」の回答が29.8%、「ゴルフはソーシャルディスタンスを保てるスポーツだと思った」の回答は18.2%、「新型コロナでいままでのレジャー・アクティビティができなくなり、ゴルフにシフトした」が11%だった。これらはゴルフがコロナ下でも安全なスポーツであると認識されていることを裏付ける結果といえ、今後新型コロナが続くとしても需要を下支えすることになるだろう。

 3つ目の根拠は、コロナ禍における新たなゴルフ環境の整備が進んだことだ。オンラインでのバーチャルレッスンを強化し、非接触型レッスンを導入したほか、Eラーニングも強化し、コロナ下における新たなレッスンの形を提示し、自粛による需要の取りこぼしがない体制を整えた。

 第4の根拠は中止が相次いだプロツアートーナメントの開催再開だ。オンラインでのコンテンツ配信をゴルフ場予約やグッズ販売につなげるビジネスモデルの同社にとって、トーナメント関連の情報は需要喚起につなげるキラーコンテンツ。それだけに、トーナメントの本格的な再開となれば、コロナ禍で顕在化した新たなゴルフ層を定着させる上で、同社の強みを最大限に生かせる。

“コロナに強いゴルフ”に頼らない戦略が復調の肝に

 連結決算と併せて発表した2021年から2023年にかけての中期経営計画では、最終年の2023年の売上高を460億円、営業利益25億円に設定した。売上高では海外セグメントをほぼ倍増となる135億円に設定し、同社はいよいよ世界戦略も本格加速させる。

 創業以来順調に業績を伸ばしてきた同社にとって、2020年はニーズがあるのに売上を伸ばせないという「特殊な1年」となった。同社が、2021年を“コロナに強いゴルフ”の恩恵を最大限に享受し、想定通り復活の1年とできるかは、万一、コロナ終息が長引いても揺らがない体制が構築できているか、つまり逆説的だが、「コロナに強い」に頼らない戦略を確立できるかが、肝となるだろう。