食品小売業においても、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)という言葉がよく聞かれるようになってきた。新型コロナウイルス(コロナ)禍で自身の健康や、環境に対する意識を高く持つ消費者は増加。売り手側も、店づくりや商品政策(MD)においてSDGs達成を見据えた明確な取り組みが求められるようになっている。
SDGs達成のための売場・商品づくりの事例
食品小売業でSDGsというと、「フードロス削減」「フードバンク活動」などがいちばんに浮かぶだろう。
また、環境への配慮や、将来的な食糧不足の懸念から「代替肉」や「昆虫食」なども新たな食トレンドとして注目されている。しかし代替のモノを“本物”に近づけるために添加物を大量に使用したり、昆虫食の需要増に対応するために本来は自然界の生き物であるコオロギを人工的に飼育したりなど、本末転倒な取り組みも散見される。
では、売り手である食品小売業がめざすべきSDGsの取り組みの方向性とはどのようなものなのだろうか。筆者が関係するSMでの売場づくり、MDの事例を下記に紹介する。
例❶「ヨコワマグロ」を販売しない
ヨコワマグロとは、資源枯渇が指摘されているクロマグロ(本マグロ)の幼魚で、関東地方では「メジ(マグロ)」とも呼ばれる。しかしあるSMでは、生態系の維持・回復のために、成魚のマグロしか販売しないという取り組みを長く続けている。SDGsの17の目標のうち「14:海の豊かさを守ろう」に沿った取り組みだ。
例❷見切り品は「試食」か「贈呈」
あるSMでは販売期限の迫った商品について、値下げや廃棄するのではなく、「試食」あるいは「プレゼント」するようにしている。ロスを出さず、商品価値も下げることなく、隠れた逸品の品質の素晴らしさをお客に知ってもらうというねらいだ。
例❸量り売りのコーナーを充実
これは愛知県および静岡県で店舗展開する高質SM「ビオ・あつみ」の最新店での取り組みだ。同店では「スマートショップ」と名付けた量り売りのスペースが充実しており、基礎調味料、はちみつ、ドライフルーツ、オイル類などを持参した容器で欲しい分量だけ購入できるようになっている。容器を持参することでゴミの削減にもつながるし、調味料などは少量から購入可能なので、常に鮮度のよい物を、余らせることなく使うことができる。
例❹ヒット商品の原材料の資源保全
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