「GO GREEN 2022~社会に必要とされる新しいSMの創造~」をテーマに、2022年度までの3カ年の中期経営計画に取り組むサミット(東京都)。各店舗が地域のニーズをとらえた独自の取り組みを展開する「個添経営Ⓡ」の考えのもと、「地域に欠かすことのできない存在」になることをめざしている。強い食品スーパー(SM)とはどのようなものなのか、それをつくり上げるためにどのような取り組みが必要なのか、服部哲也社長に聞いた。
店づくりでめざすのは「情緒的価値」の提供
──早速本題に入りますが、服部社長が考える「強い店」の定義とは何でしょうか。
服部 われわれサミットとしてめざしている「強い店」というのは、「その店の商圏内に住んでいる人にとって、生活していくうえでかけがえのない店」であるということです。竹野(浩樹現会長)が社長時代によく使っていた「マインドシェア」(消費者マインドにおける企業や商品の心理的な占有率)が高い、というのも指標の1つになります。
そうした店をつくるために重視するのは、「情緒的価値」の提供です。単純に、競合に対して強い店をつくるなら、たとえば売価を徹底的に追求することも1つの策です。安さもまた価値ですから、それと引き換えに接客や品揃え、売場づくりなどをトレードオフしたとしても、それは間違いではありません。
しかしわれわれはその方向には行かなかった。なぜかというと、安さには「楽しさ」「うれしさ」というものはあっても、「かけがえのない」「気持ちが豊かになる」という情緒的な価値は生まれづらいのではないか、と考えているからです。
実際に「案内係」(サミットが一部店舗で導入している商品や店舗サービスの案内を専門的に行う担当者)から上がってくるレポートを見ると、「この店があって本当によかった」といった声をお客さまから頂戴しているようです。そしてその数は数年前と比べると圧倒的に増えていて、めざしている方向は間違っていないのだと確信しています。
──情緒的価値の提供に関して、具体的にどのようなことに取り組んでいますか。
服部 まず、情緒的価値を提供するための取り組みを本部主導で行わないということを徹底しています。また、好事例の共有やアピールはしてもらいますが、水平展開するように指示することもありません。その瞬間に「やらされごと」になってしまうからです。
それを前提に1つ好事例を紹介すると、ある店舗のパート従業員に地域の学校でPTA活動している方がいて、「コロナ禍で子供の学習発表会を親が見に行けない」と話していたそうです。それを聞いた店長が学校に伺って、学習発表会の成果物をその店舗のイートインスペースで掲示しないかと持ち掛けたのです。結果、親御さんだけでなく、来店されたお客さまからも大好評でした。
たった1つの店舗の取り組みで、話としてはすごく小さなものかもしれません。ただ、そこで生まれた“感動の量”は決して少なくないはずです。同じような感動を全店舗で創出できれば、情緒的価値の総量はとてつもないものになります。
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