提案型の売場づくりや、トレンドを取り入れた商品開発力が注目されがちなヤオコーだが、同社は財務の安定性にも定評がある企業だ。同業他社と比較して、ヤオコーの財務はどのような点で優れているのか。上場食品スーパー(SM)を長年ウォッチする流通業界の“ご意見番”、いちよし経済研究所の柳平孝氏が分析する。
“人手と手間ひま”をかけ
売場効率を極大化
ヤオコーは、上場SM企業における位置付けは売上高で6位(2020年3期)だが、高い収益力と安定した財務体質に定評がある。総資本経常利益率(ROA) は8.4%と、2月・3月決算期の主要SM企業では、アクシアルリテイリング(新潟県/原和彦社長、ROA:9.5%)、ベルク(埼玉県/原島一誠社長、同9.2%)に次ぐ水準だ。また、過去5年間で、売上高は年平均10.3%の増収、営業利益は同10.0%の増益と高成長を果たしている(売上高・営業利益ともに5年間で1.6倍)。
同社の特徴は、“SMらしいSM”であることであろう。すなわち「豊かで楽しい食生活提案型スーパーマーケット」を標榜し、毎日の豊かな生活に必要かつ十分な品揃えの適正面積の売場で、総菜強化型かつ低価格商品にも対応しているSMである。同社の店舗は売場面積2000㎡でほぼ標準化されており、SM業界で長らく主流とされてきた売場面積1500㎡型より大型であるため、品揃え面でも競争力が強い。同社の収益構造面での特徴は、付加価値の訴求と売場・商品のきめ細かい管理による高い売場効率であると筆者は分析している。
まず、売上高と粗利益を見てみよう。
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