伊藤忠がファミマを欲しがる事情
総合商社大手の伊藤忠商事(東京都/鈴木善久社長COO)が、TOB(株式公開買い付け)により、ファミリーマート(東京都/澤田貴司社長)の全株式を取得する。これに伴い、ファミリーマートは上場廃止となる見通しだ。突然のビッグニュースに業界では「なぜ」という声が飛び交っている。伊藤忠商事のねらいは何か。
進まぬ規模拡大
冴えない海外展開
伊藤忠商事は7月8日、ファミリーマートにTOBを実施することを発表した。買い付け価格は1株当たり2300円で、買い付け総額約5800億円に上る大型TOBとなる。
TOB終了後、伊藤忠商事はファミリーマート株式の4.9%を全国農業協同組合連合会(JA全農)と農林中央金庫に約570億円で譲渡する。この先開催予定の臨時株主総会で株式併合提案が決まり次第、ファミリーマートは上場廃止となる。
突如飛び出したファミリーマートの株式非公開化について、流通業界ではさまざまな意見が飛び交っている。
確かに、このところのファミリーマートの国内事業は芳しくない。同社は2016年にユニーグループ・ホールディングス(現ユニー、愛知県/関口憲司社長)と経営統合し、当時傘下にあったサークルKサンクスを取り込んでいる。これにより、国内総店舗数は約1万8000店舗にまで膨れ上がり、店舗数ではローソンを追い抜き、万年3位のポジションから2位に浮上した。
しかし、「サークルK」「サンクス」からの看板替えの途上で、ファミリーマートの国内総店舗数は1万7000店を割るまで目減りし、現在は約1万6600店にとどまっている(3位のローソンは約1万4400店)。
海外展開も冴えず、14年の韓国撤退に続いて、20年5月にはタイでも合弁相手先に持ち株を売却している。かつては海外と国内を合わせて「世界2万5000店構想」を掲げ、海外展開に注力していた同社。「海外事業の『成功組』だったファミリーマートが一体どうしたのか」という声も最近は聞かれていた。
追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの影響によって足元でも苦戦が続いている。ファミリーマート(単体)の4月の既存店売上高は、対前年同月比14.8%減、5月は同11.0%減、6月も同8.2%減と前年同月実績を下回っている。セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:以下、セブン-イレブン)の6月の既存店売上高が同1.0%増に回復していることを考えると、ファミリーマートの苦戦が際立つ。
ファミリーマートは、オフィス街などに店舗が多いためほかのチェーンよりも影響が大きく出たと指摘する声もあるが、今後もリモートワークが定着していくことを踏まえると、チェーン全体で収益力が発揮できなくなるのではないかという指摘もある。
希望退職の結果も非公開化に影響?
そうした中での今回の株式非公開化である。
「なんとなく布石はありましたね。早期退職の募集はその布石だったのではないでしょうか」
ある業界関係者はそう話す。
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