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「バイヤー必見!今行くべき専門店」 第7回 健康提案のヒントが得られる専門店

 健康志向の高まりに応じ、近年食品スーパーの売場では「糖質オフ」「グルテンフリー」などの注目のキーワードを軸に、加工食品を集積したコーナーが多く見られるようになりました。しかしながら、実際に売上に結びつけられていない企業が少なくありません。

 そこで今回は、健康提案で参考になるメニューや、次に注目されそうな健康に関するトレンドを、人気の専門店を例に紹介します。※新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、営業日時を変更している場合があります。詳細は、各店舗のホームページや公式SNSでご確認ください。

需要はあるものの
一筋縄ではいかないテーマ

 「健康」「ダイエット」。この2つのテーマの消費トレンドを遡ってみると、「スーパーフード」「糖質オフ」「一点特化(バナナ・ゆで卵など)」「ファスティング」「ヴィーガン」「グルテンフリー」など手を変え、品を変え、さまざまなブームが起きてきました。

 このなかでも昨今、国内外を問わず注目度が高まっているのが「ヴィーガン」(主に動物性食品を摂取しない主義のことを指す)です。欧米ではヴィーガンの人口数が全体の10%を超す国もあると言われているこのマーケット。外食業界においては、グループ客の中で1人でもヴィーガン主義者がいれば、非対応の店舗は選択肢から外れてしまいます。そうしたなか、ヴィーガンに対応した商品やメニューを提供することは年々、重要度を増してきていると言えます。

 しかしながら、「健康」「ダイエット」をテーマにヒットを生み出すのが難しいということは、皆さんご承知のとおりでしょう。そうしたなか、商品やメニュー開発のポイント、またヒントを与えてくれる飲食店をお伝えできればと思います。


ターゲットを明確に、
嗜好に沿った提案を
「東京アスリート食堂」

東京都千代田区にある「東京アスリート食堂 神田錦町本店」。上の階にはランナーズステーションなどがあり、皇居周辺を走るランナーが多く利用する

 こちらは、ターゲットを明確にすることで集客に成功している飲食店です。東京を中心に約5店舗を展開。店名に「アスリート」を掲げ、アスリート向けの食事のように「スポーツ栄養学」に基づいたメニューを提供しています。

 現代人は、健康管理やボディメイクへの興味関心が高い傾向があります。この心理をとらえ、正しい食生活を基にした健康的な減量方法や、生活習慣病の予防週間なども提案しています。同店のようにターゲットを明確にすることは、その嗜好に沿った提案が可能になり、その結果リピート率が上がると考えられます。

 また、東京や大阪を中心に「GARB」「グッドモーニングカフェ」などハイセンスなレストランを100店舗以上展開する飲食店の運営・企画会社バルニバービ(東京都)が手掛けているのも興味深い点です。

メニューは「一汁一飯三主菜」がテーマで、ご飯、汁物のほか、10種類以上の中から3つの主菜が選べる


「東京アスリート食堂 神田錦町本店」
所在地   東京都千代田区神田錦町3-21 10 OVER 9 1F
営業時間  11:00~22:00(土日・祝日は10:00~20:00)
定休日   なし


健康提案はさりげなく
独創性で勝負するタコス店
「TACO FANÁTICO(タコ ファナティコ)」

2018年に目黒川沿いにオープンした「タコ ファナティコ」

 こちらのお店は、「グルテンフリー」のメニューを求めていなくても一度は足を運んでみたくなる、とくに女性の心をくすぐる要素が詰まったお店です。ビーツやターメリック、とうもろこしなどを使ったカラフルな生地と、独創的な具材で作られたタコスを約7種類提供。生地をオーダーごとに焼き上げてくれる本格派です。

 色鮮やかな商品の見た目から、それだけでも「食べてみたい」と思う人が多そうですが、同店のタコスのもう1つの魅力は、生地の多くがグルテンフリー対応という点です。

 グルテンフリーを前面的に打ち出してしまうと、「外食の時くらいダイエットや健康を気にせず、美味しいものを食べたい」という心理に反してしまう可能性があります。そうしたなか同店は、まずは商品自体の魅力で勝負し、それにつけ加えるかたちで「健康」という付加価値も提供できているお店ではないでしょうか。

カラフルな生地と、独創的な具材で作られたタコスを約7種類提供。タコスの生地の多くはグルテンフリー対応だ

「タコ ファナティコ」
所在地   東京都目黒区上目黒1-5-10 中目黒マンション1F
営業時間  17:00~26:00(土日・祝日は11:30~26:00)
定休日   無休 


トレンドを掛け合わせる!
「台湾」×「健康」 
「ベジハウス東京台湾素食」

東京都墨田区にある「ベジハウス東京台湾素食」。かつては錦糸町のガード下で営業していたが19年に移転した

 前途したとおり、「健康」「ダイエット」はいつの時代でも注目される一方、ヒット商品を生み出しにくいテーマです。そうしたなか、トレンドのキーワードと掛け合わせて商品を開発するのはいかがでしょうか。

 今回提案したいキーワードは人気が高まっている台湾料理です。台湾は仏教国ということもあり、ヴィーガンよりも広義の菜食主義者であるベジタリアンの人口数が世界的にも多いと言われています。台湾では「素食(日本で言えば精進料理)」と言われるベジタリアン料理が普及しており、台湾を訪れた経験がある人は街で「素食」の看板を掲げる飲食店を目にしたのではないでしょうか。

 こちらのお店では、大豆肉や乳清タンパク質(ホエイプロテイン)を活用した「鶏肉風とカシュナッツの炒め」や「魚風の揚げ物」など、動物性のものが一切入っていないとは思えない、コクのある美味しい素食が楽しめます。「健康」×「台湾」の商品開発は、今消費者に支持される成功法の1つだと考えています。

通常時はビュッフェスタイルの食事も提供しているが、感染症防止対策のため現在はテイクアウトの弁当を豊富に揃える

「ベジハウス 東京台湾素食」
所在地   東京都墨田区太平4-7-10
営業時間  11:30~14:30、17:00~21:00
定休日   月曜・月の最終火曜

 

「ホットペッパーグルメ外食総研」上席研究員
有木 真理(ありき・まり)

リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めると共に、ホットペッパーグルメ外食総研の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成や更なる外食機会の創出を目指す。自身の年間外食回数300日以上。ジャンルは立ち飲み~高級店まで多岐にわたる。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがうりで1日5食くらいは平気で食べることができる。「ホットペッパーグルメ外食総研」https://www.hotpepper.jp/ggs/