新型コロナウイルス(COVID-19)がドラッグストア(DgS)企業の業績に大きな影響を及ぼしている。マスクや除菌関連商品、トイレロールやティッシュペーパーなどの販売が大きく伸長している一方で、インバウンド需要が大きく落ち込んでいる。また、新型コロナウイルスの影響により、開店時期を延期するケースも出ている。
マツキヨは免税全店売上高が50%強減少
上場DgS企業の2020年2月度の既存店売上高が大きく伸びている。マスクや除菌関連商品、トイレロールやティッシュペーパーなどの“特需”が発生しているからだ。
ウエルシアホールディングス(東京都)の既存店売上高は対前年同月比20.6%増と急伸した。うち物販は20.8%増、調剤は同19.4%増だった。客単価は前年割れだったが、客数が同22.8%増となった。
コスモス薬品(福岡県)の2⽉度の既存店売上高は同11.3%増。ココカラファイン(神奈川県)の既存店の「ドラッグストア売上高」(物販)は同10.2%、調剤薬局売上高は同7.4%増。スギホールディングス(愛知県)のスギ薬局事業は同21.8%増、ジャパン事業は同13.6%増。キリン堂ホールディングス(大阪府)は同16.5%増。薬王堂ホールディングス(岩手県)は同19.6%増となっている。
一方、インバウンド売上高が大きいマツモトキヨシホールディングス(千葉県)の2月度の既存店売上高は同8.0%増と、2ケタには届かなかった。新型コロナウイルスに関する出入国制限等の影響により、免税全店売上高が50%強減少したことが響いた。
ツルハHDはテレフォンカンファレンスでコロナ対策を説明
3月16日にテレフォンカンファレンスで2020年5月期第3四半期(19年5月16日~20年2月15日)決算説明会を開いたツルハホールディングス(北海道)。売上高は対前期比6.7%増の6256億円、営業利益は同15.7%増の365億円、経常利益は同14.5%増の374億円、当期純利益は同19.8%増の233億円となった。
第3四半期中の既存店売上高については、12月度(11月16日~12月15日)はインフルエンザ関連やスキンケア関連(ボディクリーム、ハンドクリーム、リップクリーム)など季節品が好調で対前年同期比1.6%増、1月度(12月16日~1月15日)は暖冬の影響により同0.3%減。そして2月度(1月16日~2月15日)は同7.1%増と急伸した。
「1月20日を過ぎたあたりからウイルス対策関連商品の需要が一気に高まった。7.1%増のうち、マスク、消毒剤、ハンドソープ等の日用品を含めたウイルス対策関連で伸びたのは6%分以上あると推定している。時期を同じくして、トイレットロールやティシュペーパーなど紙類の供給に関する“デマ”が広がり、一時的に需要が伸びた影響も加わっていると考えている」とIR担当者は話す。
質疑応答では新型コロナウイルス関連の質問が証券アナリストから多く出た。
ツルハホールディングス執行役員管理本部長の村上誠氏は、「3月16日時点で当社従業員への感染はない。国内2121店舗のうち1~1.5時間程度営業時間を短縮しているのは162店舗。子供の臨時休校等への対応によって休暇を取得している従業員が数百名いるものの、(店のオペレーションは)営業時間の短縮やほかの店舗からの応援によって対応できている」と説明する。
2020年5月期の新規出店数は、計画よりも5店舗少ない129店舗になる見込みだ。5店舗のうち3店舗は新型コロナウイルスの影響によって開店時期を延期する。
「来期の新規出店数は、今期と同程度を計画している。現時点では出店計画を大幅に変更する判断はしていない。ただし、情報を収集して臨機応変に対応していく。当面、開店セールに伴うイベントや大規模なイベントは中止する」と村上氏は話している。