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「小売業は広告で収入を得るメディア企業になる!」=ダンハンビー社長インタビュー

英小売最大手のテスコ(Tesco)傘下で、顧客データの分析と、それに基づいたマーケティングビジネスを展開するダンハンビー(dunnhumby)。NRF 2020においてブースを展開し、さまざまなマーケティングソリューションを発表しただけでなく、スピーカーとしても登壇した。NRF開催直前にマイクロソフト(Microsoft)とのグローバルパートナーシップも締結するなど積極的な動きが目立つダンハンビー。同社のこれからの戦略と小売業が進むべき道について、ギオーム・バクーヴィエ(Guillaume BacuvierCEOに尋ねた。
聞き手:阿部幸治、協力:高島勝秀(三井物産戦略研究所)

マイクロソフトと提携 日本での展開も拡大へ!

ダンハンビーのギオーム・バクーヴィエCEO

――1月9日に締結したマイクロソフトとのパートナーシップについて、そのねらいや今後の展開について教えてください。

バクーヴィエ マイクロソフトは小売産業に注目するなかで、キーとなるパートナー企業と協業するというかたちをとり、テクノロジープラットフォームを構築しているのが特徴です。マイクロソフトは当社の顧客データ分析の能力に関心を持ち、彼らからアプローチしてきました。一方、ダンハンビーとしては、マイクロソフトのテクノロジーを活用することで、従来の自社の製品やサービスのアップグレードも期待できます。お互い、データの利活用およびその分析などにおいて、業界のスタンダードを確立させるようなことがこの協業から生まれると判断し、今回の提携に至りました。

 日本もこの提携の範囲内に含まれており、今後の日本における事業の展開も、詳細は未定ですが、拡大していくものと期待しております。

 

――ダンハンビーがマイクロソフトに期待していること、そしてマイクロソフトがダンハンビーに期待していることとは?

バクーヴィエ マイクロソフトは、小売企業が同社のMicrosoft Azure(アジュール)をよりいっそう使うようになることを期待しているでしょう。具体的にはダンハンビーが顧客データ分析などの専門性を生かして、アジュール上で動く新商品やサービスを開発していくということで、それにより小売業のお客さまを増やすことがねらいで、両社にメリットがあります。

 

――ダンハンビーの日本における今後の展開について、今回の提携の件も踏まえて教えてください。

バクーヴィエ 日本はダンハンビーにとって戦略的なエリア(国)です。だからこそ三井物産と組んで、ダンハンビー・三井物産カスタマーサイエンス(DMCS)を設立したのです。また設立から3年弱ですが、成果は出ていると思っています。とくに日本では顧客データ分析に関してまだ競合が限定的で、当社が先駆者的位置づけにいます。その環境のなか、新しいアイディアを小売業に提供していきたいと考えています。

 マイクロソフトとのパートナーシップを踏まえた日本での展開については、これから多様な可能性を模索していくという表現にとどめさせてください。いずれにせよ、大変期待しています。

小売業の広告ビジネスが急拡大!

――次に、顧客データ分析の成功事例について教えてください。

バクーヴィエ 例えばマクドナルド(McDonald’s)では、CRM(顧客関係管理)を行い、顧客ロイヤルティを高めることに成功しています。具体的には、アプリや先端技術を活用し、顧客が誰で、なぜ来店するのか、どうすれば再来店するのかを理解する取り組みをしています。これは、スーパーマーケット業界でも活用できる取り組みです。

 グローバルでは、データを小売業、メーカー、サプライヤーで共有し、コラボレーションを行う事例が非常に増えています。われわれはこれを日本で促進させていきたいと考えています。文化的にも習慣的にも、日本では情報のシェアが敬遠されてきましたが、今後カテゴリーマネジメントや販促など双方にとってメリットのある取り組みを通して、(製配販の協業を)広げていける余地は大きいと思っています。

 また、小売業において、広告ビジネスの拡大が顕著になっていますね。デジタルシェルフをはじめとする店内媒体やECサイトなどが、メーカー向けの宣伝メディアとして機能しています。小売業は広告で収入を得るメディア企業の顔を持つようになるのです。

 

――顧客との関係性構築ができている企業とその理由は?

バクーヴィエ EC企業は、そもそもの成り立ちからしてアドバンテージがありますね。一方、リアル店舗小売業では、テスコ(Tesco)やクローガー(Kroger)、セブンイレブン(Seven Eleven inc)などでしょうか。ロイヤルティプログラムが構築され、顧客データの収集、分析、利用を通じた顧客理解が進んでいるからです。

 

――「小売業が広告企業になる」という点で、進んでいる企業はどこでしょうか?

バクーヴィエ これも、広告プラットフォームを持っているため、EC企業が進んでいます。アマゾン(Amazon.com)やアリババ(Alibaba)などがその代表例ですね。小売業ではテスコ、ウォルマート(Walmart)などのメディアビジネスは大きく、今後さらに大きくしていこうとしています。もちろん、日本市場でも大きな可能性があるでしょうね。