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丸谷智保社長が明かす 「人口急減でも、セコマが北海道外へ出ない」で成長できるスゴい戦略

小売業のなかで最も寡占化が進むコンビニエンスストア(CVS)業界で唯一、「規模の経済」とは別次元で競争し、圧倒的な差別化を実現しているのがセコマ(北海道)だ。丸谷智保社長に、オリジナル商品を軸にしたカテゴリーマネジメントの手法、商品開発の体制とこれからの戦略について話を聞いた。

オペレーションの見直しで粗利益率が改善

まるたに・ともやす1954年生まれ。79年慶應義塾大学卒、同年北海道拓殖銀行入行。98年シティバンク エヌ・エイ入行、2007年セイコーマート入社(現・セコマ)、同年専務。08年副社長、09年3月代表取締役社長就任(現任)。内閣府経済財政諮問会議政策コメンテーター、北海道経済連合会常任理事、NACS International Board of Directors就任。

──2019年12月期決算は、全店売上高が前年同期比プラスと健闘されました。同時に粗利益率も大幅に改善しました。理由を教えてください。

丸谷 胸を張れるほどのことではありません。全店売上高の微増は、地域ごとのマーケットを再検証し、スクラップ&ビルドを行ったので当然の結果です。ただし、粗利益率が好転したのは、オペレーションの見直しが、奏効したものと言えるでしょうね。

──オペレーションは、どのように見直したのですか。

丸谷 ロスの削減をポイントにしました。たとえば、当社には、「ホットシェフ」という店内調理のファストフード(FF)シリーズがあります。鮮度や食感にこだわった商品なので、「消費期限は店内調理してから2時間」といったルールにしていました。しかし、それだけに廃棄ロスのリスクも高くなるので、消費期限を2時間から3時間に延長し、その代わりに、調理から時間が経っても、食味が落ちない調理法を工夫しました。

──ロス削減については、そのほかに、どのような成功事例があるのでしょうか。

丸谷 日配品の発注精度が上がったことでしょう。たとえば、チルド商品はウォークインの裏の冷ケースから補充しています。一度にまとめて補充したほうが、作業効率はいいのですが、在庫が多すぎたり、少なすぎたりしてムラができやすいといった欠点もあります。そこで、1年ほど前から、時間帯ごとに売れた分だけをこまめに補充するやり方を徹底するよう店にアドバイスしてきました。その結果、チルドの適時適量が、把握できるようになったのです。

カテゴリーマネジメントで負の影響を相殺する

──19年10月からの消費増税では、どんな影響がありましたか。

丸谷 CVS(コンビニエンスストア)には、消費増税に伴う「2%のポイント還元」という追い風もありましたが、たばこの減収といったマイナス要因もあるので、効果は相殺された感じです。

──とりわけ、税率が10%になった酒類が厳しいという声を聞きます。

丸谷 厳しいのは同じです。とはいえ、「ビール離れ」や甲類焼酎の市場縮小といった現象も前から続いているので、消費増税だけの影響ではありません。それに、酒類にも、チューハイのように伸びている商品もあります。当社では、そうした新しい成長分野に注力することで、売上減少分を補完しています。まさに、カテゴリーマネジメントですね。

増税以降、酒類販売が厳しいなか、セコマでは戦略的に伸びるカテゴリーを見つけ出し、そこに特徴あるオリジナル商品を投入することで売上の確保に成功している

──具体的に、酒類ではどのような取り組みをしているのですか。

丸谷 オリジナル商品を中心に、新しいジャンルの育成に取り組んでいます。EUとのEPA(経済連携協定)が19年2月に発効し関税が即時撤廃になったので、ワインは価格帯を引き下げ、おかげで販売数量が増えています。ビール類については、オランダ産の直輸入「オランダモルト39」など「第三のビール」に力を入れました。そのほか、余市産完熟トマトを使った珍しいチューハイ、十勝産ブランデーを使った「十勝ブランデーハイボール」といった新商品を投入し、手ごたえをつかんでいます。

PBを開発し育てる独自の体制

──セコマのプライベートブランド(PB)商品には、定評があります。商品開発体制について教えてください。

丸谷 商品本部に商品部があってそのなかに商品開発グループがあります。アイス、漬物、珍味といったジャンルごとに、商品開発担当者がいます。食品は、元の素材の良しあしが品質を左右するので、商品開発では調達も重要。そこで、調達専門部隊も組織し、道内外の農協や契約農家、自治体などをこまめに回って、調達ルートを開拓しています。そのほか、輸出入部というセクションもあり、現在23カ国から食品の原料を輸入しています。けれども、商品開発部隊と調達部隊だけで、オリジナル商品をつくっているわけではないのです。

──といいますと?

丸谷 たとえば、総菜工場にも商品開発室があって、調理師や管理栄養士の有資格者が5人ほど所属しています。セイコーフレッシュフーズという物流子会社にも、20人ほどが所属する商品部を設けて、EDIで在庫管理をしています。商品本部には販促企画部、広告宣伝部もあって、商品開発部隊や調達部隊と連携し、オリジナル商品を売り込んでいます。商品開発から売場づくり、販促、在庫管理まで、全社一丸となって体制を構築しなければ、新しい商品が育たないためです。

──北海道らしい商品がどんどん増え、ヒットを飛ばしていますが、その秘訣は何でしょう。

丸谷 道内の調達網を充実してきたことが大きいですね。たとえば、フードロス対策の一環で規格外の道産メロンをオリジナル商品に利用したり、商品名に産地の市町村名を入れたりするといった取り組みを、コツコツと続けてきました。それが、道内の自治体や農協から、評価されるようになったのでしょう。当社から商品開発の相談に行くと各地で歓待してくれるし、生産者側からタイアップを申し入れてくるケースも多いですね。

──道内産品を生かしたオリジナル商品には、どのようなものがあるのですか。

丸谷 たくさんありますよ。今年発売したものだけでも、20種類くらいあります。たとえば、むかわ町穂別地区のカボチャを使った商品、増毛町のラ・フランスを使った商品、北見市のミントや仁木町のブドウを使った商品などがあります。原料が限られているときは、当社の全店で販売するのではなく、産地の一部の店舗だけで販売するケースもあります。地域密着は、そうしたかたちでもいいと考えています。

 “北海道色”を前面に打ち出せるオリジナル商品は、外販先にも好評なので、強化したいですね。

冷凍食品も自社オリジナル品。SMなどへの外販も行っており、外販先のニーズに合わせて、商品パッケージを変更することも行っている(左)栗山町産のいちごを使ったソフト。商品名に産地の市町村名を入れたりするといった取り組みを、コツコツと続けながら、地域ブランド力の向上にも取り組む(右)

外販先は200社ほどに到達
共同配送事業も手掛ける

──その外販事業はどのような状況ですか。

丸谷 売上構成比では8%くらいですが、伸びています。外販先はSM(食品スーパー)が多いですね。取引のきっかけは、北海道物産展の新基軸として、当社のオリジナル商品に目をつけたというケースが多いですね。取引先は現在、200社ほどに達しています。東京・新橋に外販の専門部隊を常駐させているのですが、4人から5人に増員しました。取引先の開拓のほか、北海道からのデリバリーのため、物流ルートの構築も担当させています。

──そういえば、共同配送事業もスタートしています。

丸谷 北海道は、面積が広いので、人口密度の低いエリアが多く、しかも、急速に人口が減少しているので、配送効率が著しく低下しています。そこで、当社の物流網を、地域インフラとして活用してもらうことを昨年から本格的に取り組んでいます。たとえば、全国に先駆けて、雑誌の共配に参入したほか、外食店にも食材や酒類を配送しています。

──では、今後の出店計画は?

丸谷 新規出店はしますが、一方で、閉店も進めます。スクラップ&ビルドで、トータルの店舗数は、あまり変化しないでしょう。

──最後に、セコマのこれからの進む道を教えてください。

丸谷 北海道は人口が急激に減少しているので、その消費市場も全国平均以上に縮小するでしょう。しかし、当社は、道外に出ることは考えていません。むしろ、地域密着を今よりも進めていきます。北海道産品を使った地産地消のオリジナル商品の開発も、地域密着の一環。地域のお客さまは、消費者だけでなく、生産者でもあります。当社が地域から原料を仕入れることで、地域経済が活性化し、持続可能な生産・消費のサイクルになるわけです。経営環境が厳しくなっても、大地にしっかり根を下ろしていれば、倒れることはありません。

セコマ企業概要

本部 北海道札幌市中央区
資本 4億2805万円
創業 1971年
代表 丸谷智保代表取締役社長
店舗売上高 1812億円(19年12月期)
店舗数 1177店(うち北海道1082店)※19年12月末時点