リテールDXの実現をめざすトライアルは、メーカーや卸、ITベンダーなどとともに、福岡県宮若市を主要拠点にAIを活用しながらデータ分析やデバイス開発に注力してきた。そうした取り組みの枠組みと規模をさらにもう1段広げ、足元で画策しているのが「博多ベイエリアを日本のシリコンバレーにする」という壮大な構想だ。そこには、トライアルが中長期で見据える新たな事業モデルが透けて見える。
トライアルが名乗りを上げた再開発プロジェクト
「ALL JAPANでDXを推進する博多ベイエリアを『日本のシリコンバレー』に」──。今年4月中旬、こんな見出しのプレスリリースが、トライアルHD 亀田晃一社長の署名でメディアに届けられた。
その内容は、とあるコンペ案件への提案内容を公表したもの。見出しのとおり博多ベイエリアを日本のシリコンバレーにするという構想のもと、「まちづくりのコンセプト」「スマートサービス」「都市機能」といったテーマごとの詳細な説明資料が盛り込まれていた。
そのコンペ案件とは、福岡県福岡市内にあった「九州大学箱崎キャンパス」の跡地の再開発に関するものだ。九州大学と都市再生機構が公募主となり、総敷地面積約50ヘクタールのうち市が整備するエリアを除いた、約28.5ヘクタールについて、土地利用事業者をコンペ形式で募っていた。
しかし事態はやや複雑な経緯をたどった。当初は九州電力、JR九州、西日本鉄道、西部ガスなど地場の有力企業が共同で入札する見通しだったものの、2万人規模を収容する「アリーナ」の設置を巡り意見が対立。昨年6月に協力関係を解消し、アリーナ建設を計画に盛り込んだ九州電力などのグループと、街づくりを主眼としたJR九州・西日本鉄道・西部ガスなどのグループの2陣営に分かれて入札に臨むこととなっていた。
そうしたなか、今年に入り第3軸として名乗りを上げたのがトライアルグループだ。すでに協力関係にある卸・メーカーのほか大手小売業とも連携して、DX拠点としての街づくりを行うと発表。ここ数年再開発が進む福岡市内の中でもとくに好立地の案件を巡り、地場の大手企業連合に加え、トライアルという小売企業もコンペに参加したことで、地元メディアでは連日その情勢が報じられた。
結果として4月16日、優先交渉権者に選出されたのは
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