トライアルと日本電信電話(NTT:東京都/島田明社長)は2024年1月、流通業リテール業界におけるサプライチェーンマネジメント(SCM)の最適化に向けて、共同検討および研究開発に関する連携協定を締結した。通信大手とのタッグは、既存のSCMのあり方をどのように変えていくのか。
社会課題解決めざすNTTがトライアルにアプローチ
経営コストの高騰著しい今日、SCMの最適化は小売企業にとって喫緊の課題となっている。トライアルはすでに卸やメーカーなどとともに、在庫管理や購買データの分析、物流などサプライチェーン上のさまざまなプロセスの効率化を図ってきた。
そうしたなかで、トライアルとNTTが「SCM最適化」を掲げて連携協定を結んだ背景には、「サプライチェーン全体をスピーディーに最適化したい」というトライアルと、「データの利活用を進め、社会課題の解決につなげたい」というNTT双方の思惑が一致したことがある。
NTTは27年度までの中期経営戦略で「CX(顧客体験)の高度化」を掲げる。さまざまな業種・業態のパートナーとアライアンスを組み、AIや後述する「デジタルツイン」によるデータの利活用を通じて、価値創造と社会課題の解決に取り組んでいる。同社研究開発マーケティング本部の林聡志氏は「もはやNTTグループだけですべてを動かせるような時代ではない。さまざまなパートナー企業とタッグを組み、互いの強みを掛け合わせることで社会課題を解決し、世の中をもっと便利に変えていくことをめざしている」と力を込める。
一方のトライアルグループは、「流通業のムリ・ムダ・ムラ」をなくすことで、やはり消費者にとってより便利な買物環境、生活環境を創造することをめざす。傘下の Retail AI( 東京都/永田洋幸CEO)を中心に、卸やメーカー、IT企業など社外とも積極的に連携を図りながら、スマートショッピングカートの開発やAIを用いた購買データの分析などを推進。国内小売の中でもデジタル先進企業として知られている。
そんな特異性に注目したのが、NTTの島田社長だ。トライアル関連の記事や、創業者である永田久男会長の著書を読んだことで関心を持ち、23年夏にNTTからトライアルにアプローチし、トップ同士の“会談”を経て連携協定の締結に至った。
双方の知見を融合しめざす小売業の「デジタルツイン化」
トライアルにとっても
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