市民生活協同組合ならコープ(奈良県/吉田由香理事長:以下、ならコープ)は、2022年にサイバー攻撃により大きな打撃を受けた。こうした逆境を跳ね返し成長を図るべく、宅配や店舗などの事業間連携を進める。その内容は、店舗を拠点に、宅配や店頭での買物、購入商品の配送、買物代行など、複数の買物手段を組合員に提供するものだ。その拠点となる基幹店としてオープンし、全国の生協関係者から注目を集める「コープたつたがわ」(奈良県平群町)を中心に取材した。
サイバー攻撃により宅配事業が7週間停止
ならコープの2022年(23年3月期)業績は総供給高(商品売上高に相当)が対前年比11.2%減の343億円。その内訳は、無店舗(宅配)事業が同14.6%減の240億円、店舗事業が同4.6%増の96億円、夕食宅配が同52.3%減の6億円だった。※注
※注:22年度からは、21年度まで宅配事業に計上していた買物代行や移動店舗などの供給高を店舗事業に移管している
宅配事業の業績が大きく落ち込んだ理由はサイバー攻撃だ。22年10月9日、身代金を要求するランサムウェアに感染したことで、基幹システムのほか、ファイルサーバー、システムバックアップ管理サーバ、販売管理システムサーバー内の各種ファイルへのアクセスができなくなった。
これに伴い、最も影響を受けたのが宅配事業だ。事業運営のためのすべてのシステムがダメージを受けたため、全面的にサービスを停止せざるを得なかった。店舗事業は継続したものの決済手段は現金のみに限定されたほか、ポイント加算ができなくなるなどの不便が生じた。
ならコープは即座に対策本部を立ち上げ、可能な限りの手を打った。買物困難者を優先に、職員が自宅を訪問し商品を手配したほか、移動店舗の運行や、店舗と本部で連携しながら買物代行サービスも行った。
結局、宅配事業が完全復旧したのは22年12月のことだった。「約7週間にわたって配達中止を余儀なくされた。同時に約4カ月、新規組合員を募集する活動もできなかった」と鈴木正志常任理事は当時を振り返り、再発防止のための対策構築を進めている。
逆境を経験したならコープが現在、推進するのは
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