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会員数約1.5倍!オイシックス・ラ・大地の今後の事業戦略とは?

ミールキットを中心とする食品宅配事業を主力とするオイシックス・ラ・大地(東京都/高島宏平社長)は1114日、20203月期 第2四半期の決算発表会を行った。会見では業績のほか、収益力向上をめざすための今後の事業戦略についても明らかになった。

オイシックス・ラ・大地の高島宏平社長

会員数の大幅な増加で売上高アップ

 オイシックス・ラ・大地の203月期 第2四半期の決算は、売上高325億円(前年同期比2.6%増)、営業利益は9億円(同19.3%減)、EBITDA(営業利益、減価償却費、のれん償却額の合計)は13億円(同10.9%減)、四半期純利益は39000万円(同56.3%減)と増収・減益となった。

 減益の主な原因は、特別要因として前年度のらでぃっしゅぼーや経営統合や、持分法適用により195月に関連会社化した「DEAN&DELUCA」の運営企業ウェルカムの利益連結・のれん償却費の発生があったためで、関係会社化を織り込んだ期初の計画比では営業利益17%増、EBITDA7%増と順調に推移している。

 増収の主な要因としては、主力ブランドである「Oisix」の会員が前年同期比21.8%増と増加したことが大きい。また、ミールキット宅配サービス「Kit Oisix」の会員数は13万人を超え、同54.6%増と大幅に伸長している。

 会員増の要因として、高島社長は「メディア露出が増え、ミールキットに対する社会的関心が大きくなった」ことを挙げた。Oisixはこの半年間で13件のテレビ番組で紹介されたほか、子育て中の母親をターゲットにした「クレヨンしんちゃん」とのコラボ広告を行った。ツイッターでは、Oisixに関する累計口コミ数が同189%増の約23万ツイートとなるなど、世間の注目を集めていることがわかる。

M&A先との具体的な取り組みがスタート

 203月期上期に2社のM&Aを実行したオイシックス・ラ・大地だが、その具体的な取り組みが明らかになりつつある。

 1910月、同社は同年4月に子会社化した、ヴィーガン食のミールキット宅配事業を展開する米パープル・キャロット(Purple Carrot)と共同開発したヴィーガンミールキットを新発売した。「豆腐そぼろのビビンバ」(1180円:以下2人前、税抜)や「ココナッツカレー」(1580円)など、100%ヴィーガンの食材を使ったレシピを提供する。年内には約10種類を展開する予定だ。

 Oisixは子育て世代の有職女性を主なターゲットとしているが、「パープル・キャロットの子会社化発表後、ヨガやピラティスのスタジオから問い合わせがあり、これまであまりプロモーションができていなかったセグメントへのアプローチにつながる可能性がある」と高島社長は話している。

 195月に関連会社化したウェルカムが運営するDEAN & DELUCAとも共同で商品開発を行っている。Kit Oisixのレシピ開発やおせちなどで協業しており、今後も互いの知見を組み合わせた商品の開発を実施していく考えだ。

 また、通信大手NTTドコモとの協業で199月からスタートした「dアカウント」会員向けのミールキット宅配サービス「dミールキット」は、開始から2カ月でお試しセットの注文が約8000食、定期会員数は1000人を超えるなど、順調に推移している。

商品原価や物流・配送費の低減で収益力向上を図る

 子会社らとの協業で新たな商品を提供するオイシックス・ラ・大地は、今後どのような事業戦略を描いているのか。

 新たな成長事業としては、15年に開始した保育園に給食で使用する食材と献立を提供する「保育園卸事業」を強化する。同事業は203月期 第2四半期で仕入れや物流体制の大幅な見直しにより黒字転換したことを機に、取引先保育園の新規開拓に注力。現在367の保育園との取引があるが、数年以内に2000園に拡大する考えだ。

 収益力強化の面では、商品原価や物流・配送費の低減に取り組む。具体的には、193月から運送大手ヤマト運輸と共同で農産品物流の課題解決を目的とする「ベジネコプロジェクト」を始動。従来は各生産者がそれぞれ出荷を手配し、オイシックス・ラ・大地の物流センターに配送していたが、この物流費用が商品原価に含まれているほか、生産者が個別に出荷便を手配しているため、手間とコストがかかるという課題があった。

 ベジネコプロジェクトではヤマト運輸が一括で生産者から集荷を行い、オイシックス・ラ・大地の物流センターにまとめて配送することで産地からの物流を効率化する。共同集荷実験で調達輸送費の大幅な削減が見込まれることが判明したため、第4四半期中の本格稼働を予定している。

 また、決算発表会では、主力ブランドOisixの急激な成長を受け、神奈川県海老名市に新たな物流ステーションを建設することも明らかになった。稼働開始時期は未定だが、製造キャパシティの増強と庫内作業の自動化を進めることで、物流センター費の低減を図る。

 そのほか、Oisix、らでぃっしゅぼーや、大地を守る会の主要3ブランドのSPA(製造小売)化などにより商品原価の削減を図ることに加え、客単価を向上させることによって1配送当たりの収益性を高める。

 少子高齢化や有職女性の増加などにより、ミールキットは総菜などと共に簡便商品として今後ますます需要が拡大していくと見込まれる。矢野経済研究所によると、21年にはミールキットを含む国内食品通販市場規模は4兆円を超えると予想されている。このような背景のなか、オイシックス・ラ・大地はM&Aにより他社との協業で独自商品を生み出すだけでなく、収益力の向上で安定した企業体制を構築することで、日本のミールキット市場での地位を盤石にしようとしている。