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アクシアル原和彦社長が語る今後の成長戦略 「MDを磨き上げ、県外シェアを高める」

北信越を中心に店舗を展開するアクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長)。有力リージョナルチェーンとして知られる同社だが、増税や軽減税率の導入、人口減少、ボーダレスな競争の激化といった経営環境の変化にさらされている。今後のアクシアル リテイリングの成長戦略と、食品スーパー業界を取り巻く環境について原社長に話を聞いた。※10月19日に行われた「原信下飯野店」のオープン取材をもとに構成

富山県に3店舗目を出店 県外でのシェア拡大に動く!

10月19日に富山市内でオープンした「原信下飯野店」

――傘下の原信が富山県富山市に「下飯野店」を開業しました。県外での新規出店は久々です。

原 富山市への出店は念願でした。富山県に進出したのは黒部店をオープンした1999年のことですから、20年かけてたったの3店舗しか出店できていないことになります。行政との折衝なども含め、われわれのやり方が下手なのでしょうね(笑)。地元の新潟だと人や行政とのネットワークがある程度構築できているのですが、(富山だと)なかなか難しいところがあります。

――今後は県外での出店も加速していくのでしょうか。

原 地盤の新潟ではある程度のマーケットシェアを獲得していますが、他県では微々たるものです。県外でのシェアを上げるべく、もっとスピードを上げて多店舗展開に向けて動いていかなければならないと思っています。一方、新潟でもまだまだ出店余地はあると考えていて、県内・県外の両方で出店を進めていきます。

 

ポイント還元制度は「不公平」も、今やるべきはMDのブラッシュアップ

「価格対応だけでなく、新たな需要を喚起するようなMDをつくり、磨き上げるが重要」と原社長は言う(写真は下飯野店の店内)

――10月からスタートした消費増税と軽減税率の影響はいかがでしょうか。

原 とくに軽減税率については複雑な制度なので、お客さまからお問い合わせを多くいただくことになるかと思っていましたが、今のところは思ったよりも大きなトラブルや混乱はありません。他社さんからもそういう話は聞いていません。

 増税前の駆け込み需要については、5%から8%に引き上げられたときよりも少ない印象です。増税後もそれほど落ち込んでいるというわけではありません。おそらく、12月くらいには需要が元どおりになると思っています。ただ、10月中旬の台風19号による駆け込み需要で多少下駄を履いた部分もあります。一言で言えば、「今のところはそれほど悪くはないが、この先どうなるかはわからない」といったところです。

――キャッシュレス決済に対するポイント還元策についてはどう見ていますか。還元対象とならなかった企業からは今も不満が噴出しています。

原 われわれも還元対象ではない企業の1つですが、毎日のように「原信さんはいつからポイント還元を行うのか」といった問い合わせが来ています。これについては完全に政府の広報不足で、現場に立つわれわれ小売業がなんとかフォローしているという状況です。

 もっとも、ポイント還元策についてはまだ始まったばかりで、まだ消費者に浸透していないところもあるようです。しかし今後徐々に広がっていくことで、(還元対象となった)競合企業を利することになっていくでしょう。ですからこの不公平な制度は本当に見直していただきたいですし、万が一にも(206月末までの期間を超えて)施策を延長するということがあってはなりません。

 ――価格競争の面では不利な立場に置かれていますが、どのように戦いますか。

原 やはり、増税でお客さまの節約志向はより高まるでしょうし、ポイント還元企業の店に一定数は流出していくでしょう。それを食い止めるためには、ある程度の価格対応は必要だということで、値下げセールを行いました。しかしお客さまが求めているのは「価格」ではなく「商品」です。われわれとしては、よりよい商品をもっと提供していくということを、基本的な姿勢、精神として持っています。

 他社さんでは、独自にポイント還元を行っているケースもあるようですが、私はポイント還元そのものが需要を喚起するとは思えません。最初から欲しい商品があればお得感はあるかもしれませんが、ポイントが還元されるからといって欲しくもない商品を買うことはないでしょう。

 そうしたなかでは、食品スーパーとして需要を喚起するような新しいMD、商品提案をどんどんしていく必要があると思います。今のような逆風のときこそ、MDを磨き上げるべきです。すでにわれわれは昨年から準備を進めていて、この秋から新商品を多く投入しました。

M&Aは「慌てず急がず」も、再編軸の1つではあり続ける

アクシアル リテイリングの原和彦社長

――食品スーパー業界では再編の動きが加速しています。

原 食品スーパーだけでなく、ドラッグストアやコンビニエンスストアも店数を増やしているなかで、食品小売市場は飽和状態になってきています。そうしたなかでは再編が起こらざるを得なくなる。全国的に人口が減り、“胃袋”も小さくなっていくなかで、プレーヤーだけが増えるということはありません。

 また、テクノロジーへの投資を考えたときに、食品スーパー1社でまかなうことは難しい。資本も人材も必要になってくるなかで、スケールメリットを追った再編というのは増えていくでしょう。ただでさえそうした転換点を迎えつつあったなかで、増税・軽減税率導入という大きなインパクトが起きたわけで、それが新たな再編劇へのトリガーになる可能性もあるでしょう。

――アクシアル リテイリングとしてはどう立ち回りますか。再編劇の主人公になる可能性は。

原 主人公になるかはわかりませんが、再編軸の1つにはなりたいとは思っています。そう言うと「次のM&Aはいつなのか、相手は誰なのか」と聞かれるかもしれませんが、そう簡単な話でもありません。

 われわれは13年にフレッセイ(群馬県)と経営統合してアクシアルリテイリングを立ち上げて以降、本業である食品スーパーの店舗はもちろん、販売方法やそれを下支えする情報システムやロジスティクスについても時間をかけて構築してきました。そうしたインフラをしっかりと整備しておかないと、仲間をどんどん増やしたところで後々しわ寄せがくるものなので、あまり慌てずに考えたいです。とはいえ、再編の波に飲み込まれるのではなく、軸の1つとして活躍したいとは思っています。