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1年で株価が半分になった良品計画はここから巻き返せるのか?

7月10日、生活雑貨専門店の良品計画(東京都/松﨑暁社長)が2020年2月期第1四半期の業績を発表した。営業収益は対前期比5.5%増の1123億円、営業利益は同22.3%減の103億円。増収となったものの大幅減益となった。同社の松﨑社長は「第1四半期が業績の底で、これから改善に向かう」と説明する。実際、良品計画はここから巻き返すことができるのだろうか。

2020年2月期第1四半期決算の説明をする良品計画の松﨑社長

SPAの優等生が苦しんできたこの1年

 良品計画は生活雑貨、衣料雑貨、食品などを取り扱う専門店で、いわゆる「カテゴリーキラー」としてこれまで高成長を続けてきた。2019年2月期には営業収益が4000億円を突破、営業利益は447億円。製造、物流、小売を自社でまかなうSPA(製造小売)モデルで、ほぼ100%の商品がPB(プライベートブランド)だ。そのため、営業利益率は約11%とほかの小売企業と比べてかなり高い。

 また、そのほかの特徴としては、海外の売上構成比が高いことが挙げられる。海外事業の売上高は約1600億円。つまり、全体売上の約4割を海外が占める。そのうち、1200億円が中国を含む東南アジア事業と大きい。ほかにも、米国、欧州、西アジア、オセアニアなど広く展開している。

 国内、海外ともに順調に売上、利益を伸ばしてきた良品計画だが、この1年は厳しい業績が続いた。19年2月期本決算は国内の生活雑貨、冬商材の苦戦を理由に売上、営業利益とも計画から下方修正した。そして今回、最新期の第1四半期決算の営業利益が大幅減益。ここ1年で株価も約半分となっている(7月16日現在)。

 松﨑社長は「第1四半期が業績の底、第2四半期に向けて回復する」と強調した。実際、これから良品計画は業績を巻き返せるのだろうか。今回の決算内容を深掘りする。

国内、海外ともなぜ大幅減益となったのか?

 減益要因は何だったのだろうか。国内事業と海外事業それぞれの数字を見ると、国内事業が対前期比11.8%減、海外事業が同43.4%減で、国内、海外とも大幅減益となっている。

 国内の減益要因は「販管費の増大」が大きい。販管費が上がった理由は主に2つ。1つは人件費で、今期は旗艦店舗の「無印良品銀座」を含め、11店舗をオープン。今期は新入社員を100人採用するなど、例年よりも多い人数を確保するなど、先行投資が重くなった。これは「想定内の減益要因である」と松﨑社長は言う。

 一方、「想定外の販管費」もあった。それは物流費である。「今期はグローバルで在庫を持つというチャレンジをした。前期は欠品が問題となったので、今回はより多くの在庫を持つことで売上をとる戦略をとったが、在庫コントロールに甘さがあった」(松崎社長)。

 そのため、在庫が想定外の量となり、倉庫代や物流センターの人件費が重くなったため、物流費が高騰した。なお、在庫コントロールについては「すでに手は打った」という。

 海外事業については、中国の人件費、販促費、為替差損が減益要因となっている。

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巻き返しの秘策! ファミマに変わる、他の小売業への商品供給も

巻き返し施策が的中か?復調の兆しも

 大幅減益となった一方で、復調の兆しも見える。

 まず、既存店売上高。第1四半期の既存店売上高は101.5%と、前期を上回っている。懸念の中国もすでに第2四半期の既存店売上高は100を超える見通しで、全店ベースだと115%と好調だ。

 「想定内」の減益要因だった人件費や新店投資については、一時的な費用のため第2四半期以降は足を引っ張らないし、「想定外」だった物流費についても、「第2四半期には効果が出てくるだろう」(松崎社長)という。

 また、世界的旗艦店の銀座店も「順調に推移している」うえ、近年の重点施策である食品もレトルトの「バターチキンカレー」や冷凍食品が好調と、これからの楽しみも大きい。

製造拠点を日本から中国へ
「次なるファミマ」も検討中

 それだけでなく、さらなる成長策もすでに手を打っている。

 まず、「価格見直し」について。これまで良品計画は工場の移管や原材料の原価削減など原資を確保してから価格を下げていたが、今期からは原資確保よりも価格見直しを優先する戦略をとっている。価格見直しを加速させることでより顧客支持をねらう考えだ。今年秋にも価格見直しを予定しているが、原資確保は予定通り進んでおり、生産拠点を日本から中国に、中国からアセアンに移管しているという。

 さらに、中国で生産管理部を新設し、中国独自の大きさの商品を作成したり、インドのムンバイに旗艦店を出す計画を立てている。

 一方、喫緊の課題としては生活雑貨の不振が挙げられる。カテゴリー別に見ると、生活雑貨は前期を下回っており、とくに家具など大型商材が厳しい。

 「入学シーズンなど新生活の際に、生活雑貨を買う店としてはわれわれが想起される順位が低い。来期以降、商品開発に力を入れて巻き返していきたい」と松﨑社長は説明する。

 また、ファミリーマートへの供給打ち切りについて、「コンビニというチャネルは重要。現在、ほかの小売業と交渉中である」という。

 「想定外」の減益要因に早めに手を打った良品計画。その効果がねらったとおり表れてくれば、再び増益基調へと転じるだろう。