メニュー

インタビュー:成長投資、デジタル技術活用を軸に=みずほFG社長

みずほフィナンシャルグループ
 6月3日、みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長は、2019年度から始まる5カ年計画について、株主還元の現状維持を図りながらデジタル技術を活用した領域に成長投資を行っていく考えを示した。昨年8月撮影(2019年 ロイター/TORU HANAI)

[東京 4日 ロイター] – みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長は、2019年度から始まる5カ年計画について、投資余力は十分にあるとし、株主還元の現状維持を図りながら、デジタル技術を活用した領域に成長投資を行っていく考えを示した。

坂井社長は投資の優先順位について「1つは事業構造を変えていくイノベーション機能を提供する企業とのタイアップ。そして、(デジタル技術を活用した)新ビジネスの領域」と述べた。

一方で、海外展開については、アジアが重要としながらも「昔ながらの銀行業務に入っていくというよりは、デジタル化したものを手がけたい」とし、既存の銀行に対する出資や買収などの戦略からは距離を置く姿勢を示した。

インタビューの詳細は以下の通り。 

――3メガの中で、自己資本が相対的に薄い。将来の成長投資を考えると資本蓄積をする必要があるのではないか。

「確かに、成長投資余力をためるという意味では、社外流出は少なければ少ない方がいい。しかし、金融機関にストレスがかかってきた時に、株式市場での評価が我々の流動性にも影響しかねない。われわれの株主は約100万人おり、上場会社の中で最大だ。株主に安定的に還元することは、経営のもう1つの重要な要素だ」

「もちろん、ストレス時には一定のストレス耐性がなければ逆に信用力に影響しうるし、貸しはがしのようなことになったのでは持続的な成長もできない。その水準はしっかり確認した上で、まだしばらくは現在の配当水準を維持していく」

――現在の自己資本の水準で投資はできるのか。

「(国際的な銀行規制の)バーゼル3新規制ベースでCET1比率(普通株式等Tier1比率)は現在8.2%を超えており、投資はできる状況だ。当然、成長投資は絶え間なくやっていく。いざという時にある程度固まった形での投資をすることも、あるいは、一気に株主還元を強化することもありえるが、当面はもう少し資本余力を確保しておかないと、まとまった形での動きができない。(5年の中計の中で)数千億単位の投資が可能になるイメージだ」

――投資する際の優先順位をどのように考えているか。

「金額や効果などで優先順位は臨機応変に変わるが、ひとつは事業構造を変えていくイノベーション機能を提供する企業とのタイアップ。そして、すでに手掛けている個人向け金融のJ.Scoreや、これからLineと手を組んで始めるSNS金融などの新ビジネスの領域だ。金額はそれほどかさまず、スピードと分散が重要なので、乾坤一擲というものではないだろう」

「グローバル戦略の中では、もともとみずほとして基盤も歴史もあるアジアに対するリーチは必要だ。しかし、リテール分野でいえば、いわゆる昔ながらの銀行業務に入っていくというよりは、デジタル化したものを手がけたい。今後、バリュエーションが少々安くなったからと言って、大きなサイズの銀行に手を出すという発想はあまりない。米系投資銀行もいろいろビジネスモデルの変化を進めており、やはりそういう目線は必要だ」

――ライバルの他メガとは、自己資本や収益力で差が開いているが、両社を追いかけていくのか。

「そういうつもりはない」

――みずほらしさとは何か。

「いろんな観点がある。例えば、取引先企業はいざという時にしっかりバックアップする金融機関が非常に重要だ。政策保有株はさらに削減していくけれども、政策株に代わる新たなパートナーシップを、事業リスクをシェアする形で取っていく。事業や産業に対する目利き力があり、証券も仲介できる。リーマン危機後、(株式と債券の中間的な位置付けの)ハイブリッド証券を出して企業をサポートしたが、今後はそういうものを含めて新しい形で顧客企業のパートナーとして頼りにされるようにならなければならない」

「われわれの強みの源泉は信頼だ。この基盤は死んでも手放さない。いざという時にバックアップは絶対にやる。それは、みずほらしい価値だと思う」

*インタビューは、5月30日に実施しました。

(布施太郎、梅川崇 編集:田巻一彦)