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ユニフルーティジャパン代表取締役社長 ケナード・ウォング
「ボリュームよりバリュー」ハートフルの精神でおいしさを届ける

1962年以来、半世紀以上にわたってバナナの輸入販売を手がけてきたユニフルーティー ジャパン(東京都)。自社ブランドを強化するべく、2018年、社員一丸となってコーポレートメッセージから見直し、リブランディングを図った。新たな一歩を踏み出した同社の事業戦略について、ケナード・ウォング社長に聞いた。

国内のバナナ消費は増加、一方で危機的問題も

 

──まずは、果実マーケットの現状とバナナ市場の動向について教えてください。

 

ケナード・ウォング/Kennard Wong●アメリカ合衆国ハワイ州出身。大学にて会計学を専攻。米国公認会計士資格を取得後、外資系監査法人を経て、㈱チキータ デナダイ ジャパンに入社。財務コントローラーを務める。2013年7月当社副社長就任、2015年7月より現職

ウォング 総務省統計局の家計調査によれば、この30年間で家庭内における果物の年間消費量は落ちているものの、バナナの消費量は増えています。一世帯※1当たりの年間消費量は18.48kg※2。一人当たりに換算すると7.78kg※3になります。国内で流通する果物のなかでは、バナナが年間消費量トップの座にあります。

 

──バナナの消費量が伸びている要因は何でしょうか。

 

ウォング バナナに含まれる食物繊維やカリウムなどの栄養素の効果が広く知れ渡るようになったことで、美容や健康のために喫食する人が増えたことが挙げられます。また、手軽で腹持ちがよいことから、パンやごはんの代わりに朝食として食べたり、アスリートが運動前のエネルギーチャージとして取り入れたりなど、喫食シーンが広がったことも要因といえるでしょう。

 

 その結果、季節による消費量の変動はあまり見られなくなっています。かつては、春と秋に伸びて、夏と冬に落ちる傾向にありました。すいかやりんご、みかんといった国産果実が旬を迎えると、消費者は、その季節の果実を好んで食べるからです。しかし、近年ではバナナの喫食理由が多様化したことで、消費量は年間を通してフラットになりつつあります。

 

──今後のバナナ市場についてどのようにみていますか。

 

ウォング 現在、日本で流通するバナナの約8割※4はフィリピンからの輸入によるものですが、中国をはじめとする他国との間でバナナ争奪戦がはじまっています。実際、2018年のフィリピン産バナナの輸出量は、初めて中国向けが日本向けを上回りました。中国国内でのバナナ消費が伸びていることや、中国産バナナの生産量が、異常気象やバナナが立ち枯れてしまう病気が原因で、大幅に減少したことが背景にあります。日本国内のバナナに対するニーズは多様化しています。女性の社会進出が進む今、手軽に食べられる食材としてもバナナは注目を浴びているのではないでしょうか。

全社一丸となってリブランディングを実施

 

──バナナを取り巻く環境が大きく変化していますが、御社ではどのような企業戦略をとっていますか?

 

ウォング 一言でいえば、「ボリュームよりバリュー」です。売上やマーケットシェアといった数字ではなく、消費者目線に立った価値を追求し、いい商品をつくっていく。基本となるのは、お客さまが何を求めているのかを分析し、それを基にお客さまが買いたくなるものをつくること。われわれがつくりたいものをつくり、それをお客さまに買ってもらうのではなく、“お客さまが欲しがっているものをわれわれがつくる”という考え方です。その実現により、商品価値・信頼性・企業責任の観点から、日本におけるバナナサプライヤーとしてナンバーワンをめざす。これが、当社のミッションステートメントです。

 

──昨年より御社が取り扱うブランドが変わりました。そのねらいは?

 

ウォング これまで半世紀以上にわたって、当社では世界最大手「チキータ」ブランドのバナナを日本で販売してきましたが、それ以上の商品価値の追求と、昨今の市場変化を鑑み、展開する商品を「ユニフルーティー」ブランドに統一することを決断しました。商品をコモディティ化させず、お客さまが必要とするものにフォーカスした商品づくりをする体制が整ったためです。

 

 この20年間でバナナ業界は急速に変化しました。バナナはかつて、房売りなどのシンプルな販売形態でしたが、現在では産地でカットし袋詰めされ、パッケージやサイズ・量目といった店頭での差別化が進んでいます。より甘みの強いバナナをつくるために、寒暖差のある高地栽培が進んでいるのもそのひとつ。それ以外においても、原産国や品種、栽培環境、追熟方法などで違いを打ち出しています。

 

※1:2人以上の世帯
※2:数値は、総務省統計局 家計調査2017年より
※3:数値は、財務省貿易統計 統計国名符号表の2017年輸入合計(kg)を、総務省統計局発表の2017年10月時点での総人口で割ったもの
※4:数値は、財務省貿易統計 統計国名符号表2017年より

 

 

──そうしたなか、「ユニフルーティー」ブランドを認知させていくために、どんなことを手がけられましたか。

 

ウォング まず、お客さまに何を訴求したいのかを考えました。当社の存在意義を語るミッションステートメントはありますが、これはあくまでも社内向けのもの。対外的に伝えていくためには、もっと言葉を凝縮させてわかりやすく表現する必要があります。そこで、ブランドコンサルタントと協業しながら、コーポレートメッセージやブランドのポートフォリオを見直しました。経営陣だけでなく、本社・支社問わずに営業部や経理部、加工や受注の担当者、フィールドプランナー※5なども含め、すべての部署から参加してもらいワークショップを実施したのです。社員の約半数が集まりました。

 

 ユニフルーティーという会社や、バナナを商材として扱っていることについて、それぞれの想いを見える化して整理し、その中からキーワードを引き出し、お客さまに響くようなメッセージ案を作成。それらを実際に消費者を対象としたグループインタビューで披露し、反応を確認しました。さらに検討を重ねて、より消費者目線のブランドメッセージをつくり上げました。それが「ハートフル× ユニフルーティ = ハートフルーティー『おいしい』を、『うれしい』に。」です。これによって、当社の企業理念や企業風土、そしてお客さまに伝えたいことが、ひとつの流れとしてつながりました。

 

 私はハワイ出身ですが、ハワイ語に「オハナ」という言葉があります。「家族」に似た意味ですが、血縁関係のない間柄も含んでおり、深い絆を通してつながっている人たちの関係を指します。当社では、このオハナの精神をベースに、あらゆるステークホルダーに対して、家族のように強い絆で結ばれたビジネスを展開していきたいと考えています。家族というのは絶対に裏切ったりしません。同じように、生産から販売まで、家族から家族へ届けるように、信頼を裏切らない姿勢で「ユニフルーティー」ブランドを展開していきたいと思っています。

想いやストーリーを伝え、ブランドの価値を訴求

 

──具体的にどのようにして商品を訴求していきますか。

 

ウォング 一般に、消費者はモノのよさだけを基準に購入するのではなく、そこに込められたメッセージや背後にあるストーリーを大切にしています。「いい畑で、いいバナナをつくっているから買ってください」だけではお客さまには響きません。品質が高いのはもちろんのこと、ブランドの想いを情緒的にストーリーをもって伝えていく。そういう商品展開を考えています。

 

 店頭では「高地栽培」など、栽培地の標高を軸に差別化し訴求している商品が多く見受けられますが、そもそも業界として標高差のオフィシャルな定義はありません。ですから、そこにフォーカスせず、限定農園やレインフォレスト・アライアンス認証※6など、目線を変えた打ち出し方をしていきます。たとえば「こだわリッチ」は中高地栽培ですが、人と環境に配慮した限定農園で栽培しており、その土地がもたらす豊かな甘みともっちりとした食感が特長です。限定農園だからこそ安定した味と食感をお届けできる。そんなストーリーでお客さまに訴求していこうと考えています。

 

 われわれの家族がプライドをもってつくっている商品ですから、その価値をどうお客さまに伝えていくか。違いをわかっていただけるように訴求していかなくてはなりません。価格に対しても然り。「ちょっと高くても、また買いたくなるバナナ」。そんな考え方で値付けを行っていくつもりです。

 

──いよいよ3月にユニフルーティーの新たなブランドメッセージとともに「ごほうびバナナ」「こだわリッチ」「やさしさバナナ」が発売されます。小売業の方へメッセージをお願いします。

 

ウォング 販売チャンネルが多様化する時代であっても、私は店頭の重要性を認識しております。小売業各社にとって年間を通して売上構成比の高いバナナだからこそ、「おいしいを、うれしいに。」をキーワードに、価値のある商品の提供と、店頭を重視した販売促進の実施に努めてまいります。ビジネスパートナーとして是非一緒に売上拡大に向けて取り組んでいきましょう。

 

※5:全国の取引先店舗を巡回し、売場のメンテナンスなどを行うスタッフのこと
※6:持続可能な地球資源利用を推進するために活動している国際的非営利環境保護団体が、厳格な基準を満たしたものにだけ与える認証のこと

 

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